サポ限で年末にあげてたんですがそういやうち、サポーターさんいませんでしたね!ということで、文字数不足の番外編未満をお年玉公開。
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ロロとココは、養鶏場生まれの雌鶏だ。
生まれた国はハルマナート国。
これはヒトの言葉を覚えてから覚えた。
ふたりは親は違ったが、生まれたのは同じ日だ。
この国では養鶏場でもひよこは随分と可愛がられる。
人間の愛情をしっかり受け止めて、人間に懐き、平飼いの産卵鶏として年季いっぱいまで働いたら、次の世代を求められ、そこまで役割を果たせば、その後は食肉になる事もなく。
大抵の場合はふれあい牧場のような場所で、または係員たちに引き取られ、人間の愛情と共に最期まで生きる。
人様の食卓に上るお肉になる鶏とは、そもそも品種が違うのだそうだ。
これも後になってから知った事だけど。
勿論、産卵用の廃鶏を、肉食召喚獣の為の飼料として出荷する農場もあるし、自分達の農場でも、雄鶏はある程度育ててから加工食品用に出荷されてしまう。
それはそれで、貰った糧の分、最後に誰かのお役に立つのなら良いのではないか、というのがロロとココの認識だ。
今の自分達に関係ない事だから、というドライな考えでもあるのだが。
今のふたりは、御神鶏、という、人間や真龍の偉い人達も聞いた事のないという、幻獣種族だ。
この世界では、幻獣や聖獣は、基本的に大事にされる。
幻獣という括りは案外と大雑把なものなので、扱いは種によってさまざまだが、聖獣ともなれば、確実に人よりも目上の存在として扱われるのが大半の国での慣行だ。
御神鶏種のふたりはというと、恐らく聖獣種族への道の拓かれている種であろう、という推測があったため、基本的に聖獣達とほぼ同格の扱いを受けている。
といっても、普段一緒にいるのは異世界出身の主とその仲間たちの所なので、そんなに大仰な扱いは受けていない。
ただ、主にめいっぱい愛されているだけだ。
愛情のお返しとして、ふたりはほぼ毎日卵を提供する。
流石に旅程中だとその頻度は落ちるけれど、最近ではそういう遠慮もしなくなった。
そういえば、主たちは産んだ卵を安全にしまっておけるんだから、預けておけばいいじゃん、と気付いたからだ。
最初に主たちに会った時は、その直前に牧場に魔物が発生するという大騒ぎのあとだった。
養鶏場のある村の、牛の厩舎に潜り込んでいた野良猫の親子が、揃って魔物化してしまったのだという。
小さな猫だった魔物は、養鶏場にも乱入し、数羽が食い殺された。
ここの鶏達は言葉こそ話さないが、簡単な言葉を理解できる程度の知能があったのが災いした、らしい。
この鶏たちのうちのロロ、当時は無名の茶色い雌鶏の一羽だった個体は、当時から場内随一のおてんばと称される程度にアクティブな性格だった。
同期である白くて大人しい鶏が襲われたのを見た瞬間、勢いよく魔物を足蹴にし、自分にその意識を向けさせる程度には。
その結果、生き残った鶏たちの中で、この二羽だけが負傷状態で、治癒魔法のお世話になることになり――
その魔法を受けた瞬間、存在こそしていたものの、どこかぼんやりと曖昧だった自我が、急激に明確な意思を持ったそれに変わる。
そして、二羽は魔法を使った人間を、救い主、己が主と認識した。
ふたりにとって幸いだったのは、芽生えたばかりの意思を、正確に読み取る事の出来る人間が、のちの主と同行していたことだろう。
そのおかげで、ふたりは主と共に行くことを許された。
この主という人は、異世界から来たのだという。
その癖、鳥の類の世話には慣れている。
思いのほかの快適生活ゲットに、鶏たちはすっかりご機嫌だ。
恩を受けたからには返さねばならない。
そう思うふたりは、取りあえずは元々の自分たちの仕事、採卵鶏として卵を産む、という日課を続けることにした。
そもそも、自分達の意思でその日の産む産まないを決められる鶏、自体が既にイレギュラーであることに、養鶏場の人間たちは、気が付いていなかったのだろうか……?
幸い卵は味が良いと大好評だったので、鶏たちはご機嫌で卵を産む。
魔力が増えて自我が確立し、自分達の体調も何となく判るようになってきたこの段階で、既に通常の鶏たちより沢山、コンスタントに産み続けられると把握した鶏たちは、すっかり自分達の居場所を確立した。
それ以外にも、言葉の判る者づてに助言をしたり、はたまた魔鼠なる魔物を退治したり、鶏たちはすっかり主にとってはなくてはならない存在になっていき。
気が付けば、恐らくは積まれた経験が、幻獣への道を開いていた。
大きさが変わったら嫌だなあ、という理由でその道を回避していたふたりだったが、結果としては主との絆が深まったものの、大きさは変わることなく。
それからも、ふたりは常に主と共にあり、季節を巡らせ。
やがて、神の座に至ることが確定してしまった主人に合わせ、彼女たちも。
御神鶏・絢爛、そして錦繍。
通常の雌鶏姿を化身とする、この世界では異端ともいえる聖獣種、否、神獣種へと。
そうなっても、ロロもココも、性格は微塵も変わっていない。
いつも、いつまでも、主と共に。
卵の絶品さは究極に至り、下手に地元民には食べさせられないね、なんて話になったりもしたが。
それでも、主は喜んで食べてくれるのだから、と、ふたりは相変わらず卵を提供している。
産 まれた世界から旅立った、その先でも、きっと。