『人造乙女の決闘遊戯 ~グランギニョール戦闘人形奇譚~』完結致しました。
第一話を投降したのが六年前の六月だったので、完結まで六年ほど掛かりました。
しかし実際に書き始めたのは、そこから更に五年ほど前だった気がする次第です。
冒頭二千文字くらい書いて、そのまま五年ほど放置しておりました。
理由は『完結させるのが大変そう』という、あんまりな理由です。
僕は根気と根性が無いので、書き始めた物語を書き終える自信が持てず、二千文字ほど書いた段階で「これ凄く長くなる感じする……」と思い、投げ出しておりました。
そこから五年が経過し、環境が変わり、パソコンを買い替えたりしたタイミングでデータ整理していると、本作の冒頭二千文字で投げ出されていたテキストファイルが見つかり、改めてその二千文字を読み直し、これ続き書いてみようかなと思い、書き始めた次第です。
僕はもともと短編小説やら漫画やらを手慰みに描いたりして遊んでいたのですが、根気不足で、短編しか創った事がありませんでした。
なので今までは、それほど凝った設定を決めなくても、凡その展開と人物造形が出来れば、なんとか仕上げる事が出来ておりました。
しかし今回は、なんか最初から長編になりそうな気配が漂っていたので、ある程度設定をきっちり決めた方が良いかと思いながら、作業を始めた気がします。
最初に一行で言い表せるストーリーを決めて、次に登場人物を決めました。
『人造乙女が闘技場で金銭を賭けて決闘ゲームを繰り返し、孤児院が抱えた借金を完済して子供達を救う』――これがストーリーの全てでした。
昭和の少年ジャンプ的な、タイガーマスク的な、あしたのジョー的な、けっこう解りやすい感じでした。
次いで登場人物を決めたのですが、かなり昔に読んだ『少女漫画の描き方』的な本に『作中の登場人物が言いそうな台詞を最初にたくさん書き出してみる』という方法が掲載されていたのでそれを採用し、登場人物がそれぞれ作中で言いそうな台詞を、時系列とか無視して何千文字かほど書き出した結果、次第に細かなストーリーと設定が決まっていった感じです。
そんなキャラクター達の台詞を基に、ストーリーと設定を積み上げて行くうちに、自分の思う色々な要素が作中に混ざり込んで、気づけばタイガーマスクから随分と遠退いた感じになった気がします。
色々な要素を盛り込む事になった結果、伏線回収がえらい事になったわけですが、全体の85%くらいは伏線回収出来たと思います。
というか伏線回収の為に、長編になった気がしないでもないです。
同時に、言いたい事もだいたい言えた気がします。
その様な、泥縄的に膨れて行ったストーリーを補強する為に、後から『この展開を本当っぽくするにはこんな時代背景がいるよな』とか『これがあるならこの機械もあった方が良いよな』とか思いながら、やはり泥縄的に時代やら設定やらを次々に盛っていったのですが、スチームパンクというか、人造人間が登場するという設定だけは、僕の祖父が昔、自前の工房で義肢を焼いて造る職人だったので、あの完成した樹脂的な手首と、金属の鋳型の手首が、壁一面にずらっと並ぶ光景が忘れられず、ああいう不思議な雰囲気の工房が登場する物語にしようと決めていた次第です。
(とはいえ義手がずらっと並ぶ壁の描写は本編内に全く無いんですが……)
ともあれ最初に登場人物を作ったわけですが、登場人物にはだいたい、モデルとなった有名人やモチーフがいて、そのイメージもキャラクター造形で踏まえているので、どんな方々がモチーフとなったのか、書いてみます。
・エリーゼ(並びにアーデルツ)
本作の主人公であり美麗な戦闘人形・エリーゼですが、彼女のモチーフは「恋月姫」さん並びに「陽月」さんという著名な人形作家が創ったドールを、外見のイメージとして考えておりました。そして戦闘に関するスタイルは、剣桃太郎、竜太陽、藤木源之助、赤木しげるといった、漢気溢れる漫画のキャラクターを下敷きにさせて頂いているのですが、彼女自身の内面は、ドイツのミュージシャン「エニグマ」が発表した幾つもの楽曲を、モチーフとさせて頂いております。
エリーゼが本編で何度か口にしていた「求道者を惑わせるナハティガル」ですが、これはハインリッヒ・ハイネの本「流刑の神々・精霊物語」内、訳者注意書きにある「異端として追われたナイチンゲール」が基となっております。
同じく物語冒頭と終盤に登場したアーデルツですが、彼女は「精霊物語」内に綴られていた『誇り高き乙女アーデルツと楽しき英雄ゲルマン』のエピソードより『誇り高き乙女アーデルツ』が下敷きとなっておりました。
本作「人造乙女の決闘遊戯」は「流刑の神々・精霊物語」よりインスパイアされている部分が大きいです。同時に「エニグマ」の影響も大きいと思います。
・レオン、シャルル、ヨハン
この三人は「a-ha」というノルウェーのバンドメンバーを、何となくイメージしておりました。誰が誰という事は無いのですが「Time and again:The ultimate a-ha」というアルバムジャケットのイメージです。
彼らの楽曲「Hunting High And Low」という曲が好きなのですが、ラブソングの様でもあり、音楽活動に対する求道的な精神を歌っている様でもあり、主人公の一人・レオンのイメージとして考えておりました。
僕は恋愛描写が苦手なのですが、「a-ha」の楽曲には素晴らしい恋愛ソングが多く、どれも上品な感じに仕上がっているので、その辺りがレオンのカトリーヌに対する立ち居振る舞いに影響しているのではと思う次第です。
・シスター・カトリーヌ
シスター・カトリーヌのイメージは、フランスの名作絵本「カロリーヌ」シリーズが下敷きとなっております。「カロリーヌ」シリーズには、カロリーヌという少女が登場するのですが、様々な動物の子供達が友達として登場し、一緒にピクニックへ行ったり、旅行したりする中で、主人公であるカトリーヌは、幼いながらも動物の子供達をしっかり引率して楽しく過ごすという、その頑張る姿を参考としております。
その一方で60年代に活躍したフランスの歌手「フランス・ギャル」のコケティッシュな一面も併せ持ち「夢見るシャンソン人形」を歌っている様な印象です。
本編主人公のエリーゼと、過去に同じ様な景色を見ながらも、まったく対照的な生き方を選ぶ事が出来た存在として登場して貰った感じです。
どうしてカトリーヌが褐色なのかと言えば、りんたろう監督の「カムイの剣」に、チコ(本名ジュリー)というネイティブ・アメリカンに育てられたフランス人の少女が登場するのですが、その子が褐色の肌をしてて印象深かったせいだと思う次第。
・マルセル
レオンの父親で天才錬成技師のマルセルですが、オーストリアのミュージシャン「ファルコ」氏を下敷きにしておりました。「Rock Me Amadeus」が世界的にヒットしたわけですが、ファルコ氏の歌い方や表情、アティチュードは本当に楽しげで、後にYouTubeのFalco公式チャンネルに「Falco - Der Kommissar (So ein Zirkus 17.09.1983)」という、ファルコ氏が黒のタキシード姿で歌い上げる動画がアップされ、完璧に洗練された素晴らしい立ち居振る舞いに、液晶モニターの前で頭振ってリスペクトしておりました。
・ラークン伯
彼の体型やら雰囲気は、実在する人物とは思えないのですがモデルがおり、彼のモデルは「バットマン・リターンズ」に登場した、ダニー・デヴィート氏扮する「ペンギン」だったりします。「バットマン・リターンズ」のペンギンは、悲劇の生まれながら極悪人であり、とても許容出来ない悪党なのに憎めないという、不思議な味わいがあって好きでした。物語冒頭で敵役だったラークン伯が、最後まで生き残って、比較的格好良い役回りで終えられたのは、ダニー・デヴィート氏が格好良かったからだと思います。
・ナヴゥル
凶悪なオートマータでありつつ、ラークン伯と良い仲だったナヴゥルは「クライング・フリーマン」という漫画に登場した「バグナグ」というアフリカ系テロ組織の女リーダーが下敷きとなっておりました。バグナグは鋼の様な筋肉のラインが全身に浮き出している長身のアフリカ系美女であり、とても情けが深く、主人公のフリーマンに恋焦がれており、同時に残酷であり、極限までタフというキャラクター性が印象深く、その印象で描写しておりました。
・グレナディ
彼女の明確なモデルは存在しないのですが、彼女が刃渡り180センチものグランド・シャムシールを使用しているのは、菊池秀行先生の名作小説「吸血鬼ハンターD」の影響です。そして「グランド・シャムシール」という呼称は、フライング・バッファロー社のTRPG「T&T」に登場した長大な曲刀が、その様に定義されてたからです。実際に「グランド・シャムシール」という刀が存在するのかどうか解らないです。
そして彼女が有していた『自分の娘達の視点を用いて180度全て見通す』能力ですが、これは江戸川乱歩の小説「鏡地獄」が基となっており、彼女は「鏡地獄」に登場した男が発狂してしまった光景を常時見ているという恐ろしい感じです。
・シスター・マグノリア
カトリーヌの恩人、シスター・マグノリアですが、とにかく強くてタフなんだけれど、何処かに諦念を抱えているかの様な佇まいは、名作SFホラー映画「エイリアン」シリーズに登場した女性乗組員から女戦士に変化してゆくリプリー(シガニー・ウィーバー)と、菊池秀行先生の名作小説「吸血鬼ハンターD」のDを、足して二で割った様なキャラ造形となっているからです。
リプリーが同じホラー映画の主役を、シリーズ通して勤め続けなきゃならない理由の為に、どんどん悲惨な立場になってゆく辺りが、どうしても救われない戦闘用オートマータを、何十年も続けなきゃならないマグノリアの参考となっている感じです。
……他にも色々と参考にさせて頂いたり、モチーフとさせて頂いた存在は多いのですが、何時までも終わらないのでこの辺りにしておこうと思います。
次いで、本作を書くにあたって参考とさせて頂いた書籍や記事を、思い出せる分、挙げておこうと思います。
・流刑の神々・精霊物語 (岩波文庫) ハインリヒ・ハイネ、小沢 俊夫
・フェアリー(株式会社サンリオ)アラン・リー、ブライアン・フロウド、山室 静
・図説ケルト神話伝説物語(原書房)マイケル・ケリガン、高尾菜つこ
・虚空の神々(新紀元社)健部伸明と怪兵隊
・幻想世界の住人たち1~2(新紀元社)健部伸明と怪兵隊
・図解 錬金術(新紀元社)草野 巧
・ワーズ・ワード愛蔵版:絵でひく英和大図鑑(角川書店・同朋舎)ジャン・クロード・コルベイユ、アリアン・アーシャンボウ
・「WIRED記事より」2007.06.14
新説:神経の情報伝達は、電気ではなく「波」
https://wired.jp/2007/06/14/%E6%96%B0%E8%AA%AC%EF%BC%9A%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E3%81%AE%E6%83%85%E5%A0%B1%E4%BC%9D%E9%81%94%E3%81%AF%E3%80%81%E9%9B%BB%E6%B0%97%E3%81%A7%E3%81%AF%E3%81%AA%E3%81%8F%E3%80%8C%E6%B3%A2%E3%80%8D/
・「WIRED記事より」2009.06.08
「利他的行動は戦闘で進化」:コンピューターモデルで分析
https://wired.jp/2009/06/08/%E3%80%8C%E5%88%A9%E4%BB%96%E7%9A%84%E8%A1%8C%E5%8B%95%E3%81%AF%E6%88%A6%E9%97%98%E3%81%A7%E9%80%B2%E5%8C%96%E3%80%8D%EF%BC%9A%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%94%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%A2/
最後までお付き合い頂き、深く感謝申し上げます。
乱文にて申し訳ないです。
ここまで読んで下さった全ての方々に、心よりの感謝を。
コメントを下さった方々に、これ以上無いほどの感謝を。
皆様の応援が無ければ、書き進める事、叶いませんでした。
本当にありがとうございます。
皆様に幸多からんことを、お祈り申し上げます。
また、次の作品を書く事が出来ましたら、お付き合い頂けましたら幸いです。
2025.6.28 九十九清輔