ユイは、ただ前を見つめていた。
音が、遠くなる。
風の音も。
木々のざわめきも。
自分の呼吸さえも。
世界から、少しずつ消えていく。
残ったのは――
ユイの瞳。
深い、青。
その奥へ。
もっと奥へ。
沈んでいく。
――そこに。
小さな瞳があった。
うーちゃん。
いつものように笑ってはいない。
泣いてもいない。
ただ、まっすぐに。
ユイを見つめている。
その瞳へ。
ゆっくりと。
もっと、深く。
――暗闇。
何もない。
光も。
音も。
…………とくん。
小さな鼓動。
もう一度。
とくん。
暗闇の中に、
淡い青の光がひとつ、生まれた。
細い光は、
糸のように伸びていく。
ユイへ。
うーちゃんへ。
二人のあいだを結ぶように。
うーちゃんの小さな手が伸びる。
ユイも、手を伸ばす。
指先と、小さな手が――
そっと触れた。
「……いっしょ。」
とくん。
青い光が、静かに満ちる。
眩しさに目を閉じるほどの光ではない。
ただ、二人を包むように。
あたたかく。
やがて光が消える。
そこには、ユイが立っていた。
制服の上に、
見慣れたアイボリーのパーカー。
大きなピンクのリボンが、
風に、ふわりと揺れる。
ユイはゆっくりと目を開いた。
「……うん。」
胸元へ、そっと手を添える。
「いっしょだよ。うーちゃん。」