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エンターテーメント小説『千種区大封鎖』

ある晩、バイト帰りの晃司が自宅マンションの部屋のドアを開けた時に、後ろからタックルされたように玄関に倒れ込んだ。そのとき自分の背中に乗っていたのが美緒だった。北朝鮮のクローン工作員だった美緒は、当時の首相、町田秀則を本国からの命令に従って中居として潜入していた料亭で毒殺し、最終の新幹線で自宅のある名古屋に戻ってきたが、自宅があるマンションの前で仲間の工作員が待ち伏せしているのに気づき、身の危険を感じて咄嗟に隣のマンションのエントランスに身を潜めていたところに晃司が帰ってきたので、後をつけて部屋に転がり込んできた。
一晩泊めて欲しいといきなり言う美緒に事情を聞くと、とても晃司には信じられない内容だったが、テレビでは首相の町田が急死して特番でニュースを報道し続けていたし、内容が美緒の説明と合致していたので、20年前に自分の不注意から、5歳になったばかりの娘が眼の前ではねられて死んでしまって以来、生きる屍のようにただただ意味もなく生きてきた嘗てのエリート銀行マンだった晃司は、もし生きていれば同じ年の美緒に娘を重ね合わせ一晩だけの約束で泊めてやった。
翌朝、美緒の作ってくれた朝食を食べながらテレビニュースを観ていると、当時の副首相、鬼頭幸三郎がいきなり、町田首相暗殺犯の女が潜伏中とみられる愛知県名古屋市千種区を完全封鎖し、犯人の逮捕に全力を尽くすと発表した。
驚いた晃司と美緒は、町田暗殺を北朝鮮に依頼したのは鬼頭であり、その実行犯である美緒を始末することもオーダーのひとつであったことを確信し、二人でなんとか封鎖された千種区から脱出し、その後はローカル線を乗り継いで、下関まで行って関釜フェリーで韓国の釜山まで行き、釜山にある金海国際空港(キメこくさいくうこう)からトルコのイスタンブール、そこから犯人引き渡し条約をトルコ共和国としか結んでいない北キプロスに逃げる計画を立てた。
晃司と美緒は、聞き込みのために晃司の部屋を訪れた県警の杉本という汚職刑事に金を払って、杉本が検問所付近で警察車両を爆破するという手口で検問所にいた警官たちの注意を引き、千種区外へ脱出した。杉本は、幼い娘の心臓移植手術のために警察が押収した薬物や拳銃を横流しすることで高額な費用を捻出しようとしていたので、晃司と美緒からも金を巻き上げようとしたのだが、事情を知った二人は、娘の心臓移植手術に役立てて欲しいと杉本の要求以上の金を提供したことで、それに恩義を感じた本来は真面目な刑事だった杉本が、二人との約束を実行に移したのだった。
区外に脱出した晃司と美緒だったが、出た途端に北朝鮮の工作員に襲われ、晃司が美緒と同じオリジナルを持つクローンを美緒と勘違いしてアイスピックで脇腹を刺され、急いで夜間診療を実施している佐々木クリニックで治療してもらったところ、院長の妹で20年前に晃司の娘をはねてしまった当事者の看護師、佐々木沙織と偶然再会し、晃司は当時の非礼を心から詫び、佐々木沙織も長年自分を責め続け背負い込んできた重い肩の荷を下ろすことができ、お互いに心が軽くなるのを感じた。
一度喰い付いたら離さないと評判の”西城鯱”という執念深い女性記者と徳川宗家(むねいえ)という名前だけ立派な徳川将軍家とはなんら関係のない後輩の凸凹コンビに尾行されながら、晃司と美緒は北朝鮮の工作員に妨害されながらも、計画どおりなんとか下関までたどり着いたが、関釜フェリーのターミナル直前で・・・・。

『また首相を殺すんですか』〜千種区大封PART Ⅱ 〜
https://kakuyomu.jp/works/16818622176547663263
『今度はCIAと戦うんですか』〜千種区大封PART Ⅲ 〜
https://kakuyomu.jp/works/16818622176547663263

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