カクヨムで連載中の
『一冊ぶんの恋』
第五章まで更新しました。
この作品の主人公「名無し」は、人気小説家です。
ただし、恋愛小説を書く方法がかなり終わっています。
本気で誰かを好きになる。
実際に付き合う。
嫉妬したり、会いたくなったり、傷ついたりする。
その感情を小説へ使う。
そして、
一冊を書き終えたら、恋人とも別れる。
最初は、名無し自身もこのやり方にあまり迷いがありませんでした。
相手を好きになることは本物。
別れたあと傷つくのも本物。
でも、それと原稿は別。
「そういう書き方だから」
くらいの感覚です。
ところが今回。
千景と付き合い始めてから、少しずつおかしくなってきました。
部屋に歯ブラシが増える。
どうでもいい連絡を待つようになる。
煙草を吸う回数が減る。
何もしないで同じ部屋にいる時間が、好きになる。
そして第五章では、千景に言われます。
「来年もここ来ようね」
名無しは、
「そうだな」
と答えてしまいました。
今までなら、絶対に避けていた未来の約束です。
だって、名無しの予定では。
その頃にはもう、別れているから。
しかも原稿は、残りわずか。
書けば書くほど小説は良くなる。
でも。
書けば書くほど、千景との別れも近づく。
ずっと「原稿が完成すること」を喜んできた小説家が、
初めて、原稿が終わらなければいいのにと思い始めました。
作者としては、この辺から名無しがだいぶ面白くなってきています。
自分で決めたルールなのに、自分が一番苦しんでいる。
榊はそんな名無しを救ってはくれません。
「別れたくないなら、別れなければいいだけです」
と普通に言います。
正論。
本当に逃げ場がない。
そして榊は相変わらず、恋愛より原稿の進捗を気にしています。
この二人の会話を書くのもかなり好きです。
『一冊ぶんの恋』は、
恋愛小説ではあるけれど、
創作者は自分の人生をどこまで作品に使うのか。
良い作品を書くことは、誰かを傷つける言い訳になるのか。
そんなところも少しずつ濃くなってきました。
甘いだけではなく、かなり歪んだ恋愛ものです。
そして、名無しはまだ千景に、
自分が人気小説家「名無し」であることを明かしていません。
恋愛の終了予定だけではなく、こちらの秘密も残っています。
ここから原稿は、いよいよ完成へ向かいます。
恋も同じ場所へ向かうのか。
よければ続きも追いかけてもらえると嬉しいです。
『一冊ぶんの恋』
第五章「残り三十頁」まで公開中です。 📖🚬