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「ソノ記憶曖昧」の副題とタイトル

 物語を書くにあたって、私は音楽を聴きながら作業します。
 ルールは一つ。ひとつの物語に対して、必ず「ひとりのミュージシャン」に固定し、そればかりをリピートすることです。

 これには、ちゃんとした理由があります。

 以前、仕事で複数件の執筆依頼が重なったとき、頭の中がパニックになってしまったことがありました。

 書いている主人公が、途中で別の作品の主人公みたいに動き出したり、他の作品のキャラが突然現れて場を乱し始めたり……。この「キャラクター混線問題」を解決してくれたのが、音楽の力でした。

 人間の脳は、“無意識”では複数のことを並行して処理するのが得意ですが、“意識している状態”では並行処理が苦手なのだそうです。

 私は執筆という作業を「高度に意識している状態」だと思っていたので、それまでは基本的に、音楽を聴かずに無音で作業していました。


 しかし、キャラクターが自然に脳内で暴れ出す瞬間というのは、少し違います。  これは心理学の「フロー理論(Flow Theory)」でいうところの「フロー体験」、スポーツ選手などがよく口にする『ゾーンに入った』状態に近いのだと思います。

 極限の集中とリラックスが高次元で混ざり合い、“無意識”と“意識”が両立しているような不思議な時間です。

 そこで私は、作品のトーンと相性が良い音楽を探し、執筆中はそれを固定で流し続けることで、自分の中に意図的な“無意識のスイッチ”を入れるようにしました。これで、見事にキャラクターの混線問題が解決したのです。

 ひとりのミュージシャンにこだわるのにも、理由があります。
 心理学に「文脈依存記憶(Context-Dependent Memory)」という概念があります。

 特定の環境や刺激(匂いや音など)と結びついた記憶は、同じ環境・刺激の下に置かれたときに引き出されやすい、という原理です。

 特定の音楽を聴きながらキャラクターと対話を重ねることで、その音楽とキャラの声がセットになって記憶に格納されます。

 次に執筆に向かう際、同じ音楽を再生するだけで、そのキャラクターの思考や声が、自然と脳内に蘇ってくるというわけです。

 現在投稿中の新作ですが、執筆中はずっと「ジョン・レノン」の曲を聴いていました。

 その影響か、作中の主人公が事あるごとに「ラブ&ピース」という言葉を口にするなど、彼女の思想や行動原理にも、ジョン・レノンのエッセンスが色濃く反映されています。

 お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、本作の副題『Double Fantasia』は、その時に一番よく聴いていた彼の代表的なアルバム名から着想を得たものです。

 音楽の魔法によって動き出したキャラクターたちが、この先どう暴れ回るのか。ぜひ、本編で見届けていただければ幸いです。



作品 ▼
https://kakuyomu.jp/works/2912051597284451573

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