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いつも応援してくださっている読者の皆さんのおかげです。本当にありがとうございます。こんなにも多くの方に読んでいただけるとは思っていなかったので、素直にとても嬉しいです。
記念に、以前サポーター会員向けに書いた閑話を以下に貼ります。お手隙でしたらどうぞ。
閑話 シマシマさんと学校
『もっと勉強しておけば』
これまでそんな事は一度も思ったことはなかったが、つい先日はじめてそう頭によぎった。
それは、ダンジョンについて話せる友達が学校に一人もいないからだ。私も学校でもスキル上げの話で盛り上がったり、はずれマジックアイテムの使い道を議論したい。近頃は特にそう思う。
「あぁ、八宮高校に行けばよかった……」
「ちょっ、津島どしたん!? ゴブリンに頭でも殴られた?」
「ゴブリンなんて雑魚。素手で破裂させれる」
「うっそ……それは……逆に引くわ……」
実際に魔物を素手で潰すようなことはない。だって汚いじゃない。時代は石。投石こそ正義だ。
クラスの友達は私がダンジョンに通い、かなりのお金を稼いでいることを知っている。具体的な金額はボカしているが、毎週ハイブランドのバッグを買っても平気なくらい儲けていることを知ってなお私の後に続こうとはしない。
「生き物が破裂するとこなんて見たら、数日は寝込みそう……」
「ダンジョンってウエッティー持ち込めないんでしょ? 絶対に無ー理ー」
そういった忌避感を持たれるのは仕方がない。実際イカヤキメンバーたちも初めてのダンジョン行では嘔吐&気絶者続出だった。
あれをうちのクラスメイトに見せるのは流石に気が引ける。だけど誰か一人くらい同じ学校に冒険者がいてもイイじゃないか!
一緒にドロップアイテムについて語ろう! 共に第2スキルについて議論を交わそう!
そんなことを考えながら、退屈な平日を過ごしていた。
◻︎◻︎◻︎
伊吹先輩たちには内緒だが、私は私生活に於いてちょくちょくスキルを使っている。ただこの『空き巣スキル』を使って窃盗をしているのではなく、気配を消して移動しているだけだ。
私の通っている学校は、下から数えた方が早い偏差値に見合った生徒たちで溢れており、授業中にスマホをいじっているのは勿論のこと、教室内に洗濯物を干している生徒や、椅子を並べて寝ている者までいる始末だ。
そんな輩たちに己を認識されるのが嫌で、スキルで気配を消して教室を出入りしたりしている。
そんな感じで今日もまた、気配を消して校舎の三階にあるトイレにやってきた。ここは移動授業で使われる教室が並んでおり、それらの授業がない時間帯はあまり人も寄り付かず、トイレ自体も比較的綺麗だ。
ポチポチとスマホを弄り、お気に入りのチャンネルが更新されていないか確かめていると、何処かから人の声が聞こえてきた。
「……マジさー、お前がPay送ってくんねーから、昼飯食えなかったじゃん」
「────」
「それって俺らを飢え死にさせたいってことだよなー?」
「────」
複数からなる男子生徒の声だ。隣の男子トイレから漏れ聞こえているのだろう。会話の内容は恐喝?
「ならマジで今から送ってくんない? 明日こそ飢え死にしちゃうからさ」
「────」
恐喝されている側の声はここまで届いてこない。小さな声で反論しているのか、それとも何も言っていないのか。
最近の高校では漫画のような不良は既に絶滅し、その代わりに極めて倫理観の低いゴブリンのような人種が増えている。誰からも注意を受けず、伸び伸びと人に迷惑をかけているので非常にタチが悪い。
さて、こんな状況に遭遇した時、伊吹先輩や長良先輩ならどうするだろうか。いや、どうするもなく殴り込みに行くだろう。彼らは普段おとなしい代わりに、悪とみなしたものに対しては一切遠慮しない。きっちり法によって裁かせる道を選ぶだろう。
翻ってマッキーならどうか。
………………。
想像するのは止めておこう。きっと凄惨な事態へと発展するはずだ。
「あのー、先輩方。隣の女子トイレまで声が響いてきてますよ」
気付けば私は男子トイレの中に突入していた。下手に武力を得たJKは怖いもの知らずだな……。
「うっわ! 何この子。男子トイレに遠慮なく入れちゃう人種?」
「一年生なのにサボっちゃダメでしょ」
「俺たち今からウンコするところだから早く出てってくんない?」
ゴブリンの数は3。そして気弱そうな男子生徒が1。全員が二年生のようだ。
「先輩たち、今なんか恐喝じみたことしてましたよね? それ刑法に引っかかるので止したほうがイイですよ……って、これじゃタダの挑発ですね。ごめんなさい。もっかいやり直させて下さい」
勢いのまま出てきたは良いが、口を突いて出てきた言葉は単なる煽りだった。こういうところが長良先輩や姫たちとは違うんだろうな。
「は? なんだコイツ。キッショ……」
「マジウッゼーな。どっか行けって」
「それとも代わりにPayくれたりする?」
すぐに殴りかかってこないあたり、彼らは本物のゴブリンより弱いかもしれない。ヤツらは暴力への移行がとてもスムーズだ。
「あーすいません。私は日頃からダンジョンに通っているのでメチャクチャ暴力に慣れていますし、お金も大量に持ってます。あと国の要人とも面識があり、そのうえ美少女です。先輩たちが敵うことなんて何一つありません。なので今すぐ私に従い、恐喝から手を引いて下さい」
「コイツマジですげえな……」
「ゴブリンに頭でも殴られたんじゃねえの?」
「お金持ちなら少しくらい俺にくれよ」
彼らに何を言っても無駄なことは分かっている。ただ、先に警告しておくのが作法だと思ったからしたまでだ。
後は彼らが激昂して殴りかかってきてくれれば、それによって吹き飛ぶなりし、警察に突き出せばゲームクリアだ。
「コイツ女じゃなかったら殴ってたわ」
「ヤッバ。キショすぎてヤバい。動画に撮ろっかな」
「うおっ、それぜってーバズるって!」
何故こんな時に限って、女には手を出さないなんて矜持を大切にしてるんだ……。ギャヒギャヒ叫びながら突っ込んできてほしいのに。
──ピロンッ
真ん中のゴブリンがこちらにスマホを向け、動画の撮影を開始した。本当にネットへ晒すつもりだろうか。
「おい、もっかい自己紹介から頼むわ」
「国のヨージンってやつ、アレもっかい言って」
「美少女ってとこも忘れずに」
コイツら全員〆てしまおうか。そんな考えがよぎったと同時に、もう一つの案が浮かんできた。
……彼らは二年生。あと一年はここに通う訳だ。同じ学校の生徒であり、放っておいても人に迷惑を掛けるだけの碌でもない存在。それならば……。
ツカツカと前進すると、撮影中のスマホを素早く取り上げ、そのままグシャリと握り潰す。
「はっ!? ちょっ、おま何してくれんだ!」
「おいおいおいおい……」
「何お前のスマホ。柔くね?」
「ごめんなさい先輩。撮影されたくなかったので握りつぶしました。……放課後に弁償させてもらいますので、私に付き合って下さい。一緒に新しいスマホを選びにいきましょう!」
「こっわ! 何コイツ」
「いや、弁償してくれるならいいけど……」
「何で一緒に行かなきゃならんのだ。今すぐ金だけ寄越せよ」
「今は現金の持ち合わせがないんです。後で車を呼びますので一緒に乗って下さい。あとカツアゲされてた貴方も付いてきてくれますか? 私と友達になりましょう」
「えっ……。僕は……その……」
「大丈夫です大丈夫です。全然怖くないので安心して下さい。なんなら先輩にも新しいスマホを買ってもいいです」
「ひっ……」
よし。この気弱そうな男子も含めて計四人。彼らを立派な冒険者へ育て上げ、学校でもダンジョンの話ができる環境を自らの手で作り上げるぞ!
「この出会いに感謝を!」
「ちょっ、コイツマジでヤバい奴だって!」
「キショいキショいキショい!」
「お前だけ弁償してもらってこいな。俺カンケーねぇから」
一気に四人も冒険者友達ができるだなんて、今日はツイている!
この退屈だった学園生活が、薔薇色のものとなるのはそう遠くない!
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