異世界の話を書こうと決めたとき、最初に何をしたか、という話です。書きたい話の形は、ぼんやりとありました。それがどういう形だったかは、またいずれ書きます。問題は、どこから手を付けるかでした。
考えて、まず太陽系からだ、と思いました。銀河系までは考えませんでした。そこまで行くと、たぶん一生戻ってこられません。でも太陽系を考えておかないと、その先の星が決められない。星が決まらないと、大陸も気候も暦も決まらない。書きたいのは人の話なのに、その人が立つ地面がないわけです。
決めるべきことを並べてみると、こうなりました。惑星はいくつあるか。公転周期と自転周期。月はいくつで、どこにあるか。このうち、月が一番大事でした。月がないと、あるいは適切でないと、惑星の姿勢が安定しません。潮の満ち引きも起きない。潮汐は生き物が陸へ上がった話にも効いてくるので、ここを雑にすると、その星に生き物がいる理由から怪しくなります。しかも月そのものの自転と公転も決めないといけない。星同士は互いに引き合っていますから、それぞれの質量をある程度固めておかないと、そもそも計算ができません。
――といっても、計算するのはAIですが。
●決まっているもの
そんなわけで、この作品の太陽系は、実はもうかなり細かく決まっています。惑星は五つ、月は二つ。この二つの月は、常に六十度離れて空にいます。ラグランジュ点と呼ばれる位置に置きました。最初は百八十度、向かい合わせに置くつもりでいたのですが、調べてみるとその配置は長い時間では安定しないと分かって、諦めました。
月はどちらも、同じ面をこちらに向けたまま回っています。公転は二十九日。潮の満ち引きは、二つの月と恒星の合成で起きます。面白いのは、この世界では恒星のほうが主役だということです。月が地球のものより小さいので、力関係が逆転しました。おかげで大潮と小潮ははっきり出ます。
●選ぶ余地が、なかった
ここからが最近の話です。自転周期――つまり一日の長さを、まだ決めていませんでした。一年は三百五十二日と決めてあったのに、その一日が何時間なのかを、ずっと空欄にしていたのです。
先日、それを詰めました。そうしたら、選ぶ余地がありませんでした。先に決めてあった「一年は三百五十二日」と「恒星からの距離は〇・九八天文単位」。この二つが、一日の長さを二十四時間九分三十六秒に固定してしまっていたのです。私が決めるまでもなく、もう決まっていた。
設定というのは、積むほど自由が減ります。最初は何でも決められる。決めるたびに、決められることが減っていく。そして気がつくと、残った空欄には答えが一つしか入らなくなっている。不便なようですが、これはたぶん良いことです。世界に辻褄が通っている、ということですから。
●まだ決まっていないもの
正直に書いておきます。残り四つの惑星について、それぞれの質量が、まだ決まっていません。星同士が引き合う計算をするには、本当はこれが要ります。今のところ「金星くらいのもの」「木星くらいのもの」という程度で、数字が入っていない。
次はここを固めます。
――といっても、計算するのはAIですが。