「ばいばい花粉症。こんにちは異世界」
私、東山幸子、16歳。独身。ってそりゃそうだよ。
女子高生だもん。
実は日本にいたんだけど、下手を踏みましてね、ええ、こういうの異世界転移っていうらしいですね。
「あーすごい草原」
見渡す限りの草原に魔法で転移してきたらしい。
手にはスマホ。
背中にはバッグ。バッグには部活で使う美術道具が詰まっている。
教科書は学校に置きっぱなしで、タブレットくらいかな、持ち帰ってるのは。
「おう、これがスライムちゃん」
木の枝を拾ってぺちぺちしてみる。
特に有害なわけでもなく、なすがままにされていた。
これはこれでちょっとかわいいかも。
そんなこんなで、歩くこと五時間くらいかな。
あっさり言ったけど、もうくたくた。
やっと町っぽい所に到着しました。
それも、すごいなんと城塞都市ってやつですよこれ。
壁がずっと続いていて、門がこちらに口を開けていた。
「すみません、通りますよ」
門番さんに声をかけるも、日本語通じるのかな。
「どうから来たんだい? 変わった格好してるね」
「あ、え、はいっ」
通じた。よく分からないけど、通じてる。ラッキー。
それよりですよ、さっきから分かってたことだけど、空気がきれいなんです。
『空気が綺麗なんですよ』
ね、この通り。
花粉は飛んでいないらしく、いつもぐじゅぐじゅしちゃう鼻もこの通り。
なんか草の匂いもすれば、花の匂いもする。
そして町の匂い。
薪を燃やしているからか、かすかに煙っぽい匂いとかもするのだ。
それから、屋台で焼いてる、お肉の匂い!!
じゅるり!!
すごい。世界にはこんなにも匂いにあふれてる。
花粉症で年中、辛い思いをしていたのがウソみたいに、元気元気!
なんか鼻で呼吸できると、五時間歩いてきたにもかかわらず、まだ歩けちゃいそう。
どうしてか、百人力になった気分だった。
やっぱり花粉が全部悪いんだよー。
なんで、あんなにも辛い花粉を放っておくのか。
地球は不思議な国だ。
絶対、国家にとってマイナスだよ、花粉。
「ということでお肉が食べたい!」
実はですね、さっきスライムを倒してきたので、魔石を十個ほど持ってきています。
「これ、交換できませんか?」
「あ、しゃあないなぁ、いいよ」
「やった」
お肉と魔石を交換する。
レートとかわかんないけどいいや。
「本当はギルドで買い取ってくれるから、そうするといいよ」
「はい。ありがとうございます!」
こうして私の冒険は始まった。
冒険者ギルドに登録して、さらっとスライムを狩る。
ホーンラビットを倒して、そして決死のウルフ戦。
数々の戦闘をこなし、みるみる上達していく私。
なんたって、この世界には花粉症がないのだ。
私はフルパワーで戦えちゃう。
すごいぞ私、いけいけ私!
この調子なら、ドラゴンだって倒せちゃいそうだ!
やっぱり、花粉が私の性能を抑え込んでいたんだ!!!
みんなへ。私は花粉症のない異世界でエンジョイしています。
探さないでください。
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エイプリルフールで、ネタも思いつきませんので、
ちょろっと短編を書きました。
特に続きませんので、近況ノートで公開しておきます。
滝川海老郎