私は民俗学や文化人類学が好きなので、人狼族の成り立ちなんかも一応イメージして書いています。
かつて、まだ神話もない頃。
人々の中に狼とともに狩猟をする民族がいた。
彼らは狼を同じ仲間として扱っていた。
狼が命を落としたときには、その狼を食べることで弔いとした。
その肉体を食べることで死した狼も部族の血肉となり、やがて人として生まれるのだと信じられてきた。
特に部族の長は、狼の心臓を食べることを許されていた。
そうやって長い時をかけて狼と深く関わるうち、魔素によって人と狼の遺伝子が混ざり合い、狼に変身できる能力を身につける個体が現れるようになった。
やがて時代が巡り、部族ほとんどが人狼族になった頃、彼らの土地は国として組み込まれた。
国にいる他の民からすると、なぜ人狼族だけがただ人ではあり得ない能力を持つのかと疑問に思った。
それはただの人と交流するようになった人狼族も同じだった。
その異質さを埋めるため、姿形は変われど同じ人であることを互いに認めるために、ネフトという半人半獣の神は生まれた。
夜の神自体は昔からあった。
けれど、日の神シェメラを想うあまりに新月に半人半獣の姿になるというファンタジーを付け加えたのは、明確に人狼族であった。
そして現在、人狼族《ヴァフラカーン》たちはなぜ神話の男神が人狼族と同じ性質を持つかを知らない。
人が創り出した神話は、いつしか共同体の支柱として組み込まれていった。
神が人を創るのか、人が神を創るのか。
そんなことは彼らには関係のない話だ。
彼らは神を信じ、生きるだけなのだから。