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生産スキルで内政無双 サポーター先行公開 閑話 奔走するエディ

※エドワードの視点です。ウィルが父である辺境伯にウッドポール領の救援に行くことの了解を得たあたりの時点から始まるエピソードです。

「お疲れ様です、会長」
「お疲れ様、エドワード君」
 放課後に生徒会の用事を済ませると、もう夕暮れになっていた。

 もう冬だから日も短くなってきたな。
 コートの襟を立てながら、王立学園の寮に向かう。
 三階の自分の部屋に入ると、窓の外で音がする。

 なんだろう?
 窓のカーテンを開けると、窓の外の箱に鳩がいた。
「実家からの伝書鳩だ。何か緊急事態が起きたのか?」

 慌てて窓を開け、鳩の足に巻き付いている手紙を取った。
 広げてみると、父上の文字だ。

 手紙には、ウォルターフォード伯領に魔物の大群が現れて伯爵家の騎士たちも援軍に行った王国騎士団も大きな被害を受けたこと、その大軍が隣のウッドポール男爵領に向かったことが書いてあった。
「ウッドポール男爵家だけでは魔物の大群に抗するのは難しいな」

 手紙には、このままでは男爵領が壊滅するおそれがあることから、ウィルが未開地を探索した仲間たちと一緒に、増援が来るまでの時間稼ぎをするために向かったと書いてあった。

「ウィルたちが援軍に向かったなんて」
 そういえばウッドポール家のメイベルはウィルの弟子になって工房で活躍していた。
 ウィルはメイベルを助けたいんだろう。優しいウィルらしいな。

 ウィルの仲間というと婚約者のレティ、妹のソフィー、一番弟子のテオドール、エルフの族長のルーセリナ、それに護衛のオフィーリアとギルバートあたりだろう。
 少年少女が多いけれど、みんな強者といっていい。

 けれど魔物の大群を足止めできるだろうか?
 危なくなったら転移魔法で逃げる予定らしいが、逃げるタイミングを間違えて深手を負うこともあり得る。

 本当は父上自身が騎士団を率いてウッドポール領に行きたいのだろうが、陛下の許可なく他領に兵を出せるのは公爵家のみだ。そして陛下の許可を待っていると間に合わない。

 父上の手紙には具体的に何かしてほしいとは書いていなかった。だが私に知らせてきたのは、私のできる限りウィルたちを助けてほしいということだろう。

 私はすぐに寮の同じ階にあるルークの部屋に向かった。
「ルーク、今、いいか?」
「何でしょう、エディ先輩」
 幸い、ルークは部屋にいた。

 ルークに事情を話すと、すぐに理解してくれた。
「それはウィリアム殿が危険にさらされますね」
「ああ、私は一人でも援軍に向かうつもりだが、ルークにも協力してもらえるとありがたい」

「エディ先輩一人でもかなりの戦力ですが、魔物の大群なら人数が必要ですね。うちの騎士団を連れて行きましょう」
「済まない、ルーク」
「いえいえ、我が公爵領の危機を救ってくれた恩人のウィリアム殿のためです。私ができることをするのは当然です」

 ルークはすぐに公爵領に連絡を取るために伝書鳩を飛ばしてくれた。
 公爵家騎士団は他領の危機を救うために動くことはよくあるから、何かあったらすぐに動けるようになっている。
 
「エディ先輩、明日の朝にはうちの騎士団は動き出します。私たちも同じ頃に王都を出て、ウッドポール領に向かう途中で合流しましょう」
「分かった。本当にありがとう、ルーク」

 私はそれから女子寮の受付に向かった。
 面会を申し込むと、すぐに目当ての人は出てきてくれた。
「どうしたのですか、エディ先輩?」
「呼び出して済まない、フランソワ」

 出てきてくれたのは南のシルティカイム公爵家の令嬢であり、生徒会の書記をしているフランソワだ。
 私はルークに話したのと同じ内容を話した。

「まあ、弟のウィリアムさんは随分リスクをお取りになったのね。工房のスタッフであるメイベルさんのためかしら? そういえばメイベルさんは先輩の妹のソフィアさんの友人でしたわね」

 さすが、ウィルの工房のこともよく知っている。シルティカイム公爵家は国内のことは何でも知っていると言われている。

「ああ、ウィルもソフィーも優しい子たちだからね。逃げるタイミングが遅くなるのが心配だから、ルークに兵を出してもらって私も明朝から援軍に行くつもりだ」

「先輩が強いのは知っていますけれど、どうぞお気をつけてください」
 この賢くクールな後輩が本気で心配してくれるのは嬉しいことだ。
「ありがとう、気を付けるよ。君にお願いしたいのは、」

「ウィリアムさんが国の機密である魔法や魔道具を使った場合に、うちの家から王家に口添えすることでしょうか?」
 賢いフランソワは先が読める。

「その通りだ。それから父上が我慢できずに兵を出してしまうかもしれない。その場合も口添えしてもらえるとありがたい」
「まあ、辺境伯閣下の暴発の可能性ですか?」
 私の追加の依頼にはフランソワは驚いたようだ。

「先輩といい、辺境伯閣下といい、本当に家族思いなのですね。うちの家とは違うので、少し憧れます。口添えの件はお任せください」
 フランソワは優しい笑顔を浮かべた。

 クールな彼女だが、貴族としての理屈ではなく、家族を大切にするフェアチャイルド家の在り方を良いと思ってくれている。
 だからこんな頼み事をできるので、ありがたい。

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