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いくひ誌。【411~420】

※支離滅裂と虚構の世界を読み漁るように一日ごとにちがう世界を生きたならばそこに日々と呼べる何かしらはあるのだろうか、連続しない日々に日々は宿るのか、私は私か、それとも明日(きみ)か。


411:【女の子が死ぬ話】
「女の子が死ぬ話」なる漫画を2014年に読んだ憶えがある。ニコニコ静画の試し読みなので、三話までの掲載だった。ずっとしこりに残っていていつか読みたいと思っていたのだが、書店さんになかなか置いておらずに手に入れる機会を逃していた。このたび、三年越しの重版、第二刷がかかったようで、ようやく手に入れることができた。作者は柳本光晴さんだ。最新作【響~小説家になる方法~】にて2017年のマンガ大賞を受賞した折り紙つきの漫画家さんである。死者との約束をずっと守りつづける者の愛の深さと、そしてそれを突き離してでもうつくしく生きたいと願った者の生きた軌跡がこの漫画には描かれている。「響~小説家になる方法~」に登場する主人公の処女作はきっとこの漫画のようなものだったにちがいない。絶望を描いてなおうつくしい、否、うつくしさのさきにあるのは絶望だというところまで描いた傑作である。重版、ありがたいことである。


412:【音もなく】
文芸の需要が砕け散り、細分化していくのを肌に感じる。いまの時代、小説を読んでいるのは変人か暇人か、そうでなければ小説家モドキくらいなものである。2017年げんざいの時点で十代の者のうち、小説を月に一冊でも読む者は、おそらく趣味で音楽をやり、ダンスをやり、絵を描く者たちよりずっと少ないはずである。小説愛好家はすでに存在する小説を受動するだけなのに、何かを生みだそうとあくせくする者たちよりその数がすくない。これは言い方が多少よくなく、小説の場合はただ受動するだけで何かを生みだすのに値する創作活動なのである。むしろ、小説を読み、楽しむことのほうが、イチから物語をつむぎだす行為よりもいまはずっとむつかしくなっている。社会が多様化してきている影響である。まずはそこのところを我々、物語の生みの親は真摯に受け止めなくてはならないだろう。


413:【統計】
社会が多様化するにしたがい、統計の仕方も変わっていかねばならない。需要者と一概に呼ぶにしても、一個人に多様な嗜好性が内包される社会では、特定の購買層なるものの分析は容易ではなくなる。いままでの価値観のまま、統計データをそのままに信用すると足を掬われるのは自明である。想定すべきは層ではなく個人である。個人に巣食う多様性――網の目に思いを馳せねばならない。


414:【次々々回作】
万の物語を縦断する主人公のモノガタリ、読んでみたくはないですか?


415:【技術的特異点】
グーグルのAI部門の偉い人(カーツワイル氏)が言うには、技術的特異点いわゆる人類がAIと融合してさらなる進化を遂げるようになるのは2029年のことになるそうだ。ムーアの法則からしてAIは指数関数的(折り紙式)に成長していくためにそのような予測を立てているのだろう。しかしいくひしの予測では人類がAIと融合するのは、一般に言われている技術的特異点がくるとされる2046年からさらに二十年経ったあと、2060年代のことになる。否、おそらく人間とAIの融合自体は比較的早い段階、2029年を俟つことなくその技術が確立されるだろう。しかし、一般化はしない。なぜか。一つは人間とAIを融合する手段として現在有力視されているのが攻殻機動隊で登場するようなマイクロマシンを使った技術だからである。さきにも述べたが、この技術自体は比較的早い段階それこそあと八年もしないうちに実用化できるレベルで技術の確立が進むだろう。しかし、平行して、肉体の外部から脳内の神経系シナプスに働きかけるデバイスが開発される。これにより、人類は技術的特異点の一歩手前で、AIと完全に融合することなく、いまより格段に便利な暮らしを手に入れる。人類はそこでいちど技術的特異点への到達に二の足を踏むといくひしは踏んでいる。確約された輝かしい未来への懸け橋よりも、人間という生き物は目に映る解りやすい発展を選ぶ。肉体の内部に得体の知れない極小機器を注入し、著しい進化を遂げるよりも、いつでも脱着可能なデバイスにより、いまより遥かに便利な暮らしを手に入れることのほうが優先される。「人類」は進化を望んでいるかもしれない。しかし、〈人間〉はいまの暮らしを優先する。もっと言えば、急激な変化は、たとえそれがどれほどすばらしいものであるにせよ、〈いま〉をゆがめる因子であるかぎり、無視できない規模での拒否反応を引き起こす――それが『人』という生き物である。医療用や軍事兵器、生産現場でのマイクロマシンはそう遠くない将来、社会に普及するだろう。しかしAIと「人類」を結びつける触媒としては、あと半世紀はかかるだろうとここに予測するものである。


416:【技術】
新しい型を編みだすためには、身につけたすでにある型をいっとき手放さなくてはならない。手放せば衰える。技術が、型が、錆びついてしまう。では、身につけた型をより進化させる方向へちからをそそぐのはどうか。ある時点まではそれでいいだろう。しかし、ある閾値を越えると、すでにあるものを進化させることは新しさとはまたべつものだと気づくのである。極めたり、熟成させる、これは言うなれば古典化させる作業であり、新しさとはベクトルの方向がちがっている。とはいえ、新しい型を編みだすために、今までの努力を、過去の軌跡を放擲するにはいささか戸惑いが生じる。なぜか、と考えたときに浮かぶのが、勝てる因子を手放したくないとする、他者との比較である。純粋に何かを生みだしたいのではなく、誰かと競い、勝てるじぶんを保持したい。言うなれば生存本能がその葛藤の根底にある。どちらもじぶんである。未来のまだ見ぬじぶんを追い求めるのか、それとも過去の栄光(成功)に囚われ、現状を維持し、満足するか。どちらがよく、どちらがわるいという話ではない。だが、もし悩むのであれば、まだ見ぬじぶんに出会いたい。


417:【並列処理】
ある任意の出来事に対し、その処理の仕方の候補が複数あるとき、どの選択肢がもっとも効果が高いか(或いは低いか)を決める場合、現在のコンピューターは、すべての選択肢を一つずつ検証する方法をとる。一筆書きさながらの総当たりである。高い演算能力があるために可能とする荒業だが、量子コンピューターやDNAを模した近未来型コンピューターが開発された場合、すべての選択肢を同時に辿ることが可能となる。複数の選択肢を同時に並列処理できるハイスペックなコンピューターが開発されたとき、人類史からは「不確定原理」が幻影と化すかもしれない。(「同時に並列処理する」とは、すなわち、イチという解を得たときに、それに対応する選択肢分の解もまた得られる状態をいう。極論、私という人生が終わった瞬間、私が辿ることになっただろうあらゆる可能性が瞬時にシュミレーションされ、無限の私が誕生するようなものである。それが個々人、存在するすべての個体、物質、において計算できるようになる。もうひとつの世界をつくりだす以上の情報を、未来のコンピューターは扱えるようになる。ひょっとすれば、その副産物として世界に漂う膜のような「ゆらぎ」が、現象として確認されるかもしれない。いくひしにはそれが、時代の渦として感じられる)


418:【あたまいいでちゅね~】
なぁにが時代の渦だ。てきとうぶっこくのもほどほどにしときなよ、頭いい人たちの文章読んで、そこから類推できることただとりあげてるだけじゃん。しかも間違った解釈で。恥ずかしくないんでちゅか~? そんなに、よちよち、ちてほしんでちゅか~? オムツ換えてでなおしてこい。


419:【あのさぁ……】
だからさぁ、茶化すのをさぁ、せっかくさぁ……。


420:【きんゆう】
グーグルやアマゾンが銀行業務に手をだしたら、世のなかの流れがごっそり変わってしまう。というのも、しょうみ電子書籍やネット内販売のさまざまがどこかで一線を保つようにその売り上げを滞らせている要因のひとつに、まあ、購入手続きがめんどーだってのはあると思うんですよ。何かに登録し、さらにそこから支払い手続きを経る。まあめんどうです。そこでアップルは支払いをスムーズにできるツール、いわゆるギフトカードを全国どこでもコンビニに行けば手に入れられるように工夫した。ネットでいろいろ手続きするよりも、コンビニに行くほうが現代人にとっては楽だという点を考慮した結果である。そこにいくと、電子書籍はいささか時代遅れというか、時代に先行しているというか、まあ、めんどくさいままに支払いコースが放置されているな、と感じるわけですね。そこにきて、話は冒頭に戻りますが、グーグルやアマゾンがひとつの銀行としての機能をその複雑化したシステムに取りいれたとしたら、世のなかの流れがいっきにネットを中心とした世界に変わっていきますよ。いまの非ではない。だってコンビニでの支払いをスマホちかづけて「ピッ」で済んだ時代から、こんどはネットで気に入った商品あったら、購入しますか?YESボタン「スッ」ってゆびで画面撫でる(タップする)だけでもうそれはあなたのもの――ツイッターやフェイスブックでRTしたりイイネボタンを押すのと同じくらい手軽に、支払いが完了し、商品をご購入できてしまえる。そんな時代がもうすぐそこに来ている。時間の問題というか、根回しの問題というか、時代のブレイクスルーはそこのネット化なくしてありえないというか、まあ、既定路線なのですね。

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