中学の卒業式当日、
谷本 寸(たにもと すん)は交通事故に遭い、
中学以前の一部の記憶を失った。
家族のこと、勉強のこと、進学先――
生活に必要な記憶は残っていたが、
同級生に関する記憶だけが、きれいに抜け落ちていた。
それでも、なぜか三人の少女の記憶だけは消えていなかった。
かつて酷い断り方をしてしまった少女。
怪我を負わせた少女。
そして――
詳しい記憶はないのに、断片的な記憶が残っている少女。
一年後、高校生活にも慣れ始めたある日。
ランニング中の寸は、その少女と再会する。
伊東 美織(いとう みおり)。
「久しぶり」のはずなのに、
なぜか遠く、どこか噛み合わない会話。
彼女は穏やかに微笑みながらも、
一定の距離を崩そうとしなかった。
失われた記憶を取り戻したい寸と、
過去を語ろうとしない美織。
すれ違う想い、届かない言葉。
そして、彼女が抱えた“まだ語られていない過去”。
これは、
記憶を失った少年と、すべてを覚えている少女が、
同じ時間をもう一度織り直していく、静かな青春ストーリー
https://kakuyomu.jp/works/822139842483191938