久しく筆を執って書いたこの小説は、かつて私が持っていた「小説を書く」という熱を再び蘇らせてくれました。
元々、この作品はTRPGのシナリオとして練り上げたものでした。それを小説という形で世に出した理由は、ひとえにこの内容の作品を、ゲームシナリオとして終わらせたくなかったという私のワガママにあります。
塵塚怪王、というのは、作中にもありました通り、鳥山石燕の『百器徒然袋』の始めのページに載っている妖怪で、塵塚怪王と文車妖妃は対の関係になる妖怪と言われています。塵塚怪王は現在ではゴミの付喪神、あるいはゴミの付喪神の親玉として描かれることが多いですが、元々は山姥の王様という立ち位置で鳥山石燕が創作した妖怪でした。
なぜ妖怪に拘ったかというと、そもそもの発想の発端が数年前に有、やみくもに妖怪の仕業にして終わらせる、という流れに対するアンチテーゼが起点だったからです。しかし、年数がたって現在、妖怪をわざわざ主軸に置かなくても成立するのでは、と思い、実はタイトル候補に『ゴミの成る木』も用意していたのですが、タイトルのインパクトの大きさや今後のシリーズ化に伴い、妖怪名を残す判断をしました。
四谷小春、桜庭香織、そして益子美紗という三人の物語は、おそらく今後も続いていきますし、描いていくと思います。その時は是非、また一読よろしくお願いいたします。