『盲目賛歌』を読んでいただき、ありがとうございます。
今回は、この物語のラストに仕掛けた「裏設定」と「構造」について、少しだけお話ししようと思います。
本作は、一見すると退廃的なダークファンタジーの詩ですが、実は「終わりのない永久機関(無限ループ)」のシステムを描いたお話です。
読者の皆さんは、ラストのフレーズに気づかれましたでしょうか。
1. 「知」と「地」のパラドックス
豚たちが求めているのは、本来、自分たちと同じ地面にいて、今すぐ飢えを満たしてくれる身近な「地の賢者」です。
しかし、彼らが知を求めて崇拝し、自らの躯を積み上げて「塔」を築いてしまうせいで、せっかく見つけた賢者は自動的に「雲の上の賢者」へと押し上げられてしまいます。
求めて手を伸ばせば伸ばすほど、自らの手で対象を遠くへ幽閉してしまう。
これが、この世界を縛る残酷な法則です。
2. 「称賛礼讃 雲の下」の真意
雲の上の賢者が、孤独の中で耳にする「称賛礼讃 雲の下」という響き。
これは、かつて自分に向けられていた歓声の残り香ではありません。
遥か地上(雲の下)で、古い賢者をあっさりと見捨てた豚たちが、「新しく見つけた次の『地の賢者』を祭り上げ、新たな塔を建て始めた歓声」なのです。
雲の上の賢者は、無音の世界で、かつて自分が落雷で叩き落とした「鳥の風切り音」だけを胸に、永遠の静寂へと沈んでいきます。
実はこの結末、第4話「台替わり」で歌った「重いなら王冠を支える台を変えましょう」という一節が、そのまま実行された姿でもあります。
王冠(権威)の中身が空虚で、支える者を潰してしまっても、システムは困りません。台(=豚たち自身)を新しく替えればいいだけだからです。
古い賢者を見捨て、次の賢者のために塔を積み直す。「台替わり」で予告されていたことが、この最後の場面で、実際に起きているのです。
3. 「タンタンタン、ト、タンタンタン」のリズム
この絶望的なループ構造を、本作では「タンタンタン、ト、タンタンタン」という、口をついて出てくるようなリズムに乗せて歌っています。
高くなりすぎて機能不全に陥る権威と、泥の中で新しい生贄を祭り上げ続ける盲目の豚たち。
この不気味で陽気な「おかしみ(ユーモア)」を、あのステップと共に楽しんでいただけたら幸いです。
物語はまた、第1話の「一段目」へと還っていきます。
追記
盲目賛歌-6について
心支えるは骸の塔/我頼るは骸の塔
賢者にはもう、自分の価値を証明してくれる「他者からの本物の承認」が存在しません。
ここは話すことも聞くものもなくなった、かつて自身は賢者であったことを証明するものはこの盲いた豚の躯の塔しか存在しなく、空虚だと分かっていながら、それにしがみつくことでしか自分を保てないという依存を表しています。