日本軍の対戦車戦闘と言うと、皆様は何を思い浮かべますか?
私は、まず刺突爆雷や梱包爆弾などの、肉薄攻撃で使用する兵器を思い浮かべます。
実際、本土決戦のために編成された国民義勇隊や海軍陸戦隊では、梱包爆薬を背負って敵戦車に飛び込む訓練や、刺突爆雷を使う訓練が行われていました。
もっとも、本土決戦のための部隊には、陶器の手榴弾や、猟銃、国民簡易小銃を混ぜてもなお、小銃や手榴弾などの基本的な武器すら満足に支給できていない状態だったので、そういった自爆兵器も不足していたようです。
また米軍は戦車と歩兵の協力が上手く、戦車の死角を歩兵が埋める戦術を取っていました。そんな米軍戦車に肉薄攻撃を仕掛けるのはかなり難しかったでしょう。
もし実際に本土決戦が行われていたら、米軍のM4戦車を撃破する有効な方法は、数少ない最新鋭戦車である三式中戦車や四式中戦車か、あるいは本土決戦用の師団では一部にしか配備されていなかった対戦車砲しかなかったと思われます。
そしてそれらの兵器も、数や備蓄弾薬は足りていませんでした。
欧米ではドイツ軍も連合国軍もソ連軍も、敵戦車を自軍の戦車で撃破するという戦術を多く取っており、それに比べると日本軍の対戦車戦闘はかなり弱そうに見えます。
ですが、そんな悪い印象の多い日本軍の対戦車戦闘ですが、それはあくまで本土決戦用、つまり末期の話です。
日中戦争や太平洋戦争で主力として前線で戦っていた通常の師団の場合は、また状況は違っていました。
日本軍の歩兵たちは、ゴム製タイヤを持つために機動力の高い一式機動四七粍速射砲などの対戦車砲や、(こちらは少数のみの配備でしたが)小銃の先端に取り付けることで対戦車擲弾を発射することができる二式擲弾機を有しており、米軍やイギリス軍の戦車部隊を相手に善戦しています。
日本軍は、戦車で戦車を撃破するのではなく、速射砲などの対戦車砲で戦車に挑むことを想定していました。
実際、日本軍の戦車部隊が敵戦車部隊相手に撤退を余儀なくされたのち、その敵戦車部隊が日本軍の戦闘機と速射砲部隊により撃破されたといったエピソードも、いくつか存在しています。
実は、戦車の主な役割が対戦車戦闘であったのは、第二次世界大戦〜冷戦期の一部のみで、多くの時代においては対戦車よりむしろ対歩兵において力を発揮しています。
現代においても、戦車は主に歩兵相手に活躍することが多いです。
そういう意味で、輸送のしやすさと対歩兵戦を重視し小型軽量な戦車を機甲部隊の主力とし、対戦車戦は速射砲や砲戦車(日本軍の対戦車自走砲)に委ねた日本軍の構想は、正しかったと言えるでしょう。
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