小学校の帰り道、僕らはいつも猫の集まる公園によって帰る。
給食のパンを半分残して子猫に与えたり、逃げない子たちは休日に洗ってやったりとかなり可愛がっていた。
彼女はとても猫に好かれるようで、公園に近づけば必ずお迎えの猫が一匹つき、公園に入れば母親猫のそばでじゃれていたヨタヨタ歩きの子猫たちが彼女に向かうと足にまとわりつく。母親猫は彼女のそばに自分の子らが行っても気にせず、暖かな日なたで目を閉じていた。
僕には一匹の猫がよく来てくれた。少し歳のいった、ゴワゴワ毛の猫だ。ほかの猫は滅多に来なかったけど、そいつだけは毎日来てくれる。
「ね、そうた。かわいいね、にゃんこ」
「うん、かわいい」
僕は猫を撫でながらチラッと彼女を見た。彼女は僕の方になんて興味もなかったようだ。
ぼんやりしていると鼻でグイッと猫から催促がくる。さぼるな、もっと撫でろって事だ。
「よそ見するなって?ごめんごめん」
おっさんみたいなゴロゴロ声を出す猫を撫でながら僕の意識は確実に隣の彼女に向かっていた。
グイッ、グイッとまた猫が鼻を押し付けた。
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「おーい、アイツがやってきたぞ」
見張り番の仲間が嬉しそうに駆けてきた。
すると、そこらで好き勝手していた子どもらがワイワイさせながら重そうな赤い物を背負ったあの子の所へ走っていく。
「おかえりー」「どこいってたの」「あそぼー」「なにする?」
子どもらしい高い声であの子に話しかける。
「ふぅ、疲れた。やっと休める」
「ほんとに、子どもは元気ねぇ」
親たちは適当になにか喋ったあと、すぐに眠ってしまった。
たしかに赤のあの子は魅力的だけど、私はあの子よりももう一人の子の方が気に入っている。
弱っちくて暗くて、いい所なんて食べ物をくれる所ぐらいしかないけど、私は赤の子の隣にいつもいる黒の子が好きだ。
いつものように黒の子に近づいて「早くして」と一つ言えばすぐに黒の子は触れてくる。もうちょっと強く触って欲しいけど、これは黒の子が臆病で弱いから、私は気にしない。
ふと、撫でる手が止まった。
「また、あの子をきにしているの?」
黒の子の目はあの子に釘付け。ほぅ、とため息をついて赤の子にみとれていた。
これもいつもだ。黒の子は赤の子が好きなのに自分のものにしようとしない。見てるだけで何も言わない。
「そんなことしてたら、とられるわよ。はやくあなたが取りなさい」
何度言っても聞かないし、押しても私をなでるだけ。
「うん、かわいい」
「おばか。私に言っても意味無いでしょう」
グイッとまた鼻を押し付けた。