ストックが途切れてしまい、少し投稿に間が空いてしまいます。申し訳ありません
ストックを補充しないといけないのに昨日書いたバレンタインSSです
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後日談の後日談《バレンタイン編》
桃花とぐだぐだ飲んでいたある日のこと。
そういえば女の園だと、今日みたいな甘ったるいイベントはどうしているのだろう。私自身は女子校に通ったことがないので、純粋な好奇心から桃花に問いかけてみた。
「そういえば、あの学園ってバレンタインみたいなイベントはどうしてたの」
「なんで知らないんですか? ああ先生は、クリスマスに! 逃げて! しまわれたからですね!!」
家なら人目を気にしないで済むからと、完璧な美女の外面を放り投げている桃花は、こうして清々しいクソガキっぷりを見せつけてくる。宅飲みでよかったな、外で飲んでたら確実に水ぶっかけてたぞ。
水の代わりにアイアンクローを桃花にお見舞いすると、彼女はすぐに降参した。なんで打たれ弱いのにすぐふざけるんだろう、この子。
「めちゃ、痛い……これが元病弱生徒にすることか……?」
「自分からもう健常者として扱ってほしいと頼み込んだ元病弱生徒がなんか言ってる」
あ、目を逸らした。可愛いやつめ。
「自業自得すぎる。調子に乗りすぎでしょ」
「先生と飲めて浮かれてますから。それはそうと、バレンタインはやっぱりある程度浮かれてましたよ」
「今の桃花より?」
「今の私より。でもほら、手作りは家庭科の授業でしか許されない世界でしたから、お菓子より小物の交換が主流でしたね」
「あー、なるほどね」
いくら花の女子高生同士いえど、毒味役が必要なお家柄ばかりの学校ではチョコの交換もままならないのか。
そうなると、その学園で過ごした桃花もまたチョコを渡すことには慣れていないのだろうか。少しばかり好奇心がくすぐられた私は、ローテーブルの菓子置き場から、チョココーティングがかけられた細いビスケット菓子を取り出した。
そしてそれを桃花に向けて差し出してみる。
突然の行為に桃花は戸惑っていたが、そのまま差し出されたものを素直に咥えてぽりぽりと齧ってくれた。こちらを窺いながら食べている様子が、まるで犬っころのようで思わず変な笑いが出てしまう。
「ふっ、ふは、いや……食べるんかい」
「……ん、えっ、だって先生が食べて欲しそうだったし」
唇についた生地のカスをぺろりと舐めながら、平然と桃花が答える。イタズラのつもりが、さも当然のように返されてしまうと逆に困る。こちらの様子を見て、彼女も私の意図に気がついたようだった。
「あ、もしかしてこれバレンタインのつもりです? 私が来月3倍返ししちゃってもいいんですか?」
「いらんいらん、ろくなことにしかならない気がするから」
甘やかしたり、構うだけで桃花はすぐ調子に乗る。しかし彼女がそんなにも浮かれやすいのは、私が原因なので強く言えないのが悔しいところだ。
「先生がこれ咥えて差し出してくれたらもう完全に襲ってたんですけどね、残念です」
「……そんな真似できるか、バカ」
バッチリ俗世に染まってるじゃん、心配して損したよ!!