嫌疑不十分。
不起訴処分通知書の、理由の欄に印刷される五文字です。
この紙は、訴えられて釈放された人のところに届きます。そして、訴えて信じてもらえなかった人のところにも、まったく同じ書式で届きます。同じ役所が、同じ五文字を、両側に配達している。
そこが、二本の小説の出発点でした。本日20時から、同時に連載を始めます。
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『不同意性交等罪の国で ― 静かな春 ―』
現代ドラマ/全8話
https://kakuyomu.jp/works/2912051605990477345
二〇三一年。手をつなぐのに承認アプリが要る国の話です。
二十三日勾留され、灰色の紙を財布に入れて生きる居酒屋の店主。勇気を出して訴えたのに、同じ五文字の通知を受け取った女性。昭和の見合いを知る介添人。同じ夕方に同じ判子を二度押した検事。逮捕を十二分、不起訴を四十秒で報じたテレビの人。
章ごとに語り手が入れ替わる連作です。すれ違うときには、物語は物語に見えない。すれ違いを後からほどいて、結び直した記録として書きました。
本日20時に序章と第一章、21時に第二章。以降は毎日23時更新、8月16日完結。
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『示談師たち ― 不同意性交等罪の相場 ―』
ミステリー/全11話
https://kakuyomu.jp/works/2912051605987469058
昼のワイドショーに流れた一枚の字幕から、元・地面師の金主が新しい商売を思いつきます。
「芸人S被告側、示談金2500万円を提示か 被害者側は拒否」
――たったいま、テレビが全国に向けて、相場を公示した。
脅し文句は一つも使いません。弁護士名の丁寧な通知を一通送るだけです。逮捕と実名報道とスポンサー離れを頭の中で上映するのは、受け取った本人ですから。
キャッチコピーでお察しの方は、お察しの通りのオマージュを含みます。中身は大真面目なクライムノワールです。
本日20時に序章と第一章、21時に第二章。以降は毎日22時更新、8月19日完結。
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読む順番について。
片方から入るなら『静かな春』を先に、とお勧めします。静かなほうで主題に慣れてから、ノワールに入る順です。逆でも読めますが、『示談師たち』の速度に慣れた目には、『静かな春』の静けさが遅く見えるかもしれません。
世界観のつながりはありません。同じ法律を、別の高さから見た独立二作です。
『静かな春』に、こういう台詞があります。
「世間は白と黒の喧嘩ばかり中継してるけど、この国が毎年いちばんたくさん作ってるのは、白でも黒でもないのよ。灰色よ。灰色の人は、声を上げないの。灰色には、旗がないから」
旗のない人たちの話を、二本、書きました。両作とも完結済みの原稿があり、最終日まで毎日、必ず更新されます。
※両作ともフィクションです。実在の人物・団体・事件とは関係ありません。性犯罪・性被害を主題として扱うため、セルフレイティングを付けています。