ふざけたファンタジー書いてあるんですけど。
なんか、こう改変すればオッサンコンテストに応募できるんじゃね? とか思ったのですよ。
ちな、先日限定ノートに載せたやつの改変版です。
仮題:「聖女のワキガは聖なるかほり」
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「……では、勇者ミシェルよ。聖女の捜索、頼んだぞ。動けるのはお主しかいないのだ」
「お任せください陛下。どんな困難があろうとも成し遂げて見せます」
ここ、ガンドワナ大陸北東部にあるタミオン王国、王城内にある謁見の間では。
目前の王に跪く勇者と呼ばれるオッサンが、決意も新たに、そう力強く誓いの言葉を口にした。
勇者ミシェル──どことなく酸いも甘いも知り尽くしたような雰囲気を醸し出す、齢三十八の当代の勇者である。
「すまぬ。結界を張れるのは聖女だけなのだ。早く聖女を探し出さないと、来たるべき|魔物暴走《スタンピード》に間に合わぬでな」
偉そうに伸ばしたひげをなぞりつつ、あまり申し訳なさそうに王はそう言う。だが、ミシェルはそんなことをまったく気にしていなかった。
この平和な世界に転生しても、勇者として役に立たず。過ごしてきた怠惰な日々から、ようやくさよならできるのだ。ワクワクを止められるわけもない。
まあ、任務が聖女捜索という地味なものだとしても、である。
(聖女……聖女か。神に愛された聖なる乙女。きっと美人だろうな……って、いかんいかん。俺にはシオンという美しい婚約者がいるのだから)
勇者という存在を王国に囲い込むため、ミシェルは十以上年齢の離れた第三王女であるシオンと婚約させられているのである。王国内でも『傾国の美女』と呼び声の高いシオンとの婚約だ、たとえ無理やりであろうとも、ミシェルは不満なくそれを受け入れた。
今では王国内のバカップルとして有名でもある。アレはまだ正式に婚姻してないのでできないが。
(しかし、聖女捜索の任務遂行中はシオンとも会えないな……早いところミッションコンプリートしないと……ってちょっと待て)
ミシェルはその時、疑問点が頭に浮かんだ。すかさず王に確認する。
「……陛下。ところで、聖女というのは、どのようにして探し出せばよいのでしょうか?」
ワクワク感に気を取られ、大事なところがおざなりになっていたことにミシェルは気が付いた。だが。
「…………」
王は、そこで黙ってしまった。今度は居心地悪そうに蓄えたひげをなぞっている。
ミシェルも黙り込むしかない。
「……腋《わき》から」
「はい?」
「聖女は、腋の下から、かぐわしい聖なるにおいを醸し出すらしい」
「……はい?」
「聖力というものは、腋の下からあふれ出すそうなのだ。だから、その女性を探し出せばよいのだ」
「…………はい?」
一瞬フリーズするミシェルであった。
が、そこは歴戦の床上手、脳も股間も復活が早い。
「ちょっと待ってくださいよ陛下!! なんですか聖なるにおいって!! しかも腋の下からですかよりによって!! どうやって探し出すんですそれ、『すいませーん、あなたのワキガ嗅がせてくださーい』とかいってテイスティなスメルを味わわなきゃならんのですか!! なんでそんな方法なんですか!?」
「すまんな……そもそも、聖魔法というものは扱えるものが聖力持ちだけ、すなわち神に愛された聖女だけなので、その扱いを知らないかぎりそれ以外に方法がないのだ」
「そうは言ってもいちいちそんなこと言いながら確認してたら違う意味で勇者になっちゃいますよ俺!!」
「そこはまあ……うむ、勇者の知恵を絞って、だな……」
「だいいちその確認ができるのは十分仲良くなってからじゃないと無理じゃないですか!! いっそもう『ワキガが聖なる香りの乙女』とかいって自己申告してもらったほうがいいんじゃないですか!?」
「それはやった。既にやったのだよミシェル。だが、残念なことにその手法では無理だったのだ。あまつさえ香水をつけてくる乙女なども多くてな、聖女詐称で何人投獄したことか……」
「……」
「それにな、『聖なる香り』とはいったいどういう香りなのか、ということの説明が言葉では難しいのだ。先代聖女を探し出した先代の勇者ならその香りをかげばわかるのかもしれないが……」
「じゃあ先代勇者にお願いしましょうよ」
「残念なことに聖女を探し出したのちにすぐ腹上死したので、その香りを知っているものは存在しないのだよ。そのうえ聖女によって香りというものは違うらしいのだ」
(クッソ種馬。やっぱそういう関係にならないと無理なんじゃねえかなあ、これ)
ミシェルは頭が腹痛を起こしかけた。だがこのまま引き下がるわけにもいかない。
「悪臭がする聖女とかは考えられないんですか?」
「神に愛された聖女が悪臭をまき散らすわけがなかろう。朕も嗅いだことはないのだが、聖女は間違いなくいいにおいがするだろうて」
「……」
いや嗅いでる。絶対嗅いでるよこの王様。そうミシェルは察したが、さすがにそこまで口に出すわけにはいかなかったので押し黙ることにした。沈黙は美徳である。
「……そして一応念を押しておくが。聖女というものは、男性経験のない女性に限られる。もし見つけ出したとしても、初貫通式などせんでくれたまえよ」
「ぶはっっっっ!! なんすかそれ!!」
「当たり前だろう。聖女が男性を知ってしまったら性女となってしまうのは、世の理の常なのだから」
「ひょっとして、聖女を見つけ出すのが大変な理由って……」
「察したか。そうだ、神に愛されし乙女というものは一人や二人ではないはずなのだが、男性を経験してしまい聖力を失ってしまうものも多いのだよ。結界を張ってからであれば|婚姻《そういうこと》は可能とはいえ」
「……」
「まあ、そのあたりは、十一歳未満のデビュタントを済ませていない幼女に絞って探し出せば問題はなかろう」
「ありますあります大ありです!! そんなことしてたら勇者がようじょスキのペドフィリア扱いされちゃうじゃないですか!! というかそんな第二次性徴も迎えていない幼女がワキガ醸し出すわけないでしょう!!」
王に対する敬意。それが薄れていることが言葉の端々に出ているミシェルであるが、事態が事態だけに王は気にも留めていなさそうだ。
「とにかく、それを探し出してこその勇者だ。頼んだぞ、この国の命運はミシェル、お主にかかっておるのだから」
「……御意」
王に丸投げされたが、いい加減疲れたミシェルは、問答を終えそこで引いた。
やる気が一気に失せたことは内緒である。
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その後。
肩を落としつつ謁見の間を出たミシェルに駆け寄ってきたのは、婚約者である第三王女シオンであった。
「ミシェル様……お疲れでしょうか? 顔色が……」
「あ、ああシオン。大丈夫、これは精神的疲れなので」
金色の瞳と髪、ゆるふわカール。まさしく昭和のアイドルのような美少女であるシオンだが、もうすぐミシェルと離れ離れになることを悲しんでいるのか、表情はさえなかった。
「そうですか……もうすぐ、お別れなのですね」
「悲しまないでくれ、またすぐ会えるから。音速で任務を終わらせ、またきみのもとへ帰ってくるよ」
「ミシェル様……」
そういってハグする二人。世界は二人のためにあるようなワンシーンだ。
「では、しばしのお別れだ」
「……少しでも早く、わたくしのもとへ戻ってきてくださいね」
「ああ。シオンも、私のことをどうかお忘れなきように……」
「もちろんですわ。昼も夜も、ミシェル様のご無事を願いながらお待ちしております。だから、いつまでもわたくしを一人ぼっちにしないでくださいませ」
「……」
熱いベーゼを交わしても許されそうな雰囲気だったが、さすがに王城内なのでそれは控えるミシェルであった。
(……シオンのため、とっとと終わらせて帰って来よう)
そう誓うと、不思議とやる気も出てくるものである。気を取り直したミシェルは、後ろ髪を引かれるような思いを飲み込み、踵を返して聖女捜索の準備へと向かった。
……なんとなくNTRフラグが立ったような気がしないでもない。