はじめましての人ははじめまして、久しぶりの人はお久しぶりです。皆月いくという者です。
さて、今回はタイトルの通り『湖におわす龍神さまの話』がランキング入りしたことについて、読者の皆さまに感謝を申し上げます。 2年くらい前に書いたものが、今になって急上昇したことにとても驚いております。
ここからは後書きという名のちょっとした裏話なのですが、この物語の案は私が短大生だった頃からあったものでした。 まず、龍神さまの祠の存在を知ったのは、短大1年生の秋のこと、生物の授業のフィールドワークで春採公園を歩いて先生の説明を聞いていたときでした。
公園から見て湖の対岸にある岡の茂みに、周りの木と同化したような佇まいの木でできた鳥居が見えて、先生は龍神の祠だと説明していました。 当時の私は、今の私なんかよりもかなりの夢見がちな少女(とは言えない年齢だけど)でしたので、ひっそりと佇む神様の話を書いてみたいと思いました。 でも、自分が普段書くようなジャンルではないのと、単純に課題に追われていることもあって、龍神さまの話はいつの間にか遠くに追いやられてしまいました。
龍神さまをまた思い出すきっかけになったのは、短大2年の初夏の司書養成科目の授業でのことでした。 内容は地域史料の保存についての授業で、その中でアイヌの時代に釧路で起こった地震と津波の伝承でした。 3章の登場人物である沙織の物語は、半分私の実体験みたいなもので、龍神さまと水害の歴史が自分の中で繋がっていく恐ろしさが今でも私の中に残っています。
とうとう私は、恐ろしいものに手を出してしまったのでは……?
半ば逃げ出すように目を逸らして4年後の夏に、地域の都市伝説をテーマにした企画を見つけて、やっぱり龍神さまからは逃げられない……となって書いてしまった始末です。
書いてみて気づいたことは、噂というのは受け取る人、時間が経つにつれて形が変わっていくものなのだろうということ。 そして歴史や伝承を調べるのはけっこう楽しいことに改めて気づきました。
最後に、近年、日本各地で大地震が多発しています。 私の住んでいる街、釧路も他人事ではありません。 近いうちに大地震が起こって前よりも大規模な津波が来て、時期によっては凍死によって死んでしまう人の方が多いだろうと、震災の起こった日を迎えるたびにローカルニュースで伝えられています。
私たちにできることは、正しく備えて、正しく恐れることだと思いました。
長くなりましたがここまで読んでくださってありがとうございます。 また、次の作品でお会いしましょう。
皆月いく