【あとがき】2章『弥堂優輝』
2章は主人公の弥堂くんを描く章でした。
雑に出来事を上っ面だけまとめると、1章で覚醒したけどすぐにナーフされて次のチカラを手に入れる話。
その中で描きたかったテーマは2つ。
1.本当の弥堂はどういうヤツなのか
2.弥堂が勝つというのはどういうことなのか
ということ。
「本当の弥堂」
正確には「弥堂の本当」になります。
弥堂くんは異世界で戦争をしてたので人を殺しまくってます。それは1章の過去編でも語られました。
同様の「昔はオレもヤンチャだったんだぜ?」系の主人公はわりと定番です。
しかし多くの場合、それは過去のことで作中のリアタイでは殺さないからマイルドになったり、相手が悪人だからセーフになったり。
本作では主人公にそれは許されません。
罪をしっかり罪として犯し、殺しは有耶無耶にはなりません。相手が襲ってきて殺されそうだったから殺してしまった。それは仕方ないよねで済まされません。
自分の都合で、自分の利益のために人を殺めます。
なので、今回の2章で真っ先に人を殺したのは彼だったという事実がきちんと残りました。
今後その罰をきちんと受けることになるのか、それとも改心をするのか。また、開き直って好き放題を続けるのか。それこそ彼がしょっちゅう嘯いている「自分が殺される時まで」それを続けて、殺されたら終わりとなるのでしょうか。
「弥堂が勝つということ」
それがどういうことになるのかがこの2章の結末でした。主人公が勝ってまるっと解決!ということにはならず、後味の悪さが残りました。
その主な原因は犠牲になった人や犠牲にした人がいること。
そしてこの物語の世界が勧善懲悪の世界ではなく、また主人公の弥堂くんが正義側でもないからです。
今どきそんな物語はいくらでもありますが、この物語も我々が生きている世界と同様に、それぞれの立場ごとの都合のために、限られたパイやリソースを奪い合う戦いがメインとなります。
そんな中で弥堂くんが勝つとどういうことになるのかというのが2章で示されました。それによって2つのことが想像させられます。
1つが、この先の戦いで主人公が勝つとどういうことが起こり得るのか、他の登場人物が主人公に殺されてしまうのではないかという恐怖が常につき纏うことになったということ。
もう1つは、弥堂くんが何故異世界であんなに嫌われてたのかということ。
「異世界での弥堂くん」
弥堂くんは紆余曲折あったものの、一応は結果を出したはず。なのにその世界の人々に受け入れられなかった。
その理由の一つがよくある復讐系の勇者召喚もののように、召喚された先の世界の住人がろくでもないからということ。
しかし、それ以上に弥堂くん自身がもっとろくでもないモノに為ってしまったから。というのがもう1つの理由です。
彼の苛烈で悪辣な戦い方や在り様に異世界の人々もドン引きだったからですね。
弥堂くんは『死に戻り』が禁忌だから、信心深い異世界の住人たちはそれを目にすると恐慌状態に陥ると1章の過去編で供述してました。今回のレイスのキーニングのように。
確かにそれもあったのでしょうが…
ルビアは「『勝った』とか『負けた』とかの結果以外に何も残らない」
エルフィは「こんなことを続けてたらこっちの世界でも…」
なんてことを言ってました。
異世界で勝って帰ってきたはずの彼のことを、七海ちゃんは「何も残ってない」と感じとりました。
そんな彼はどうなっていくのでしょうか。
「クズの人生」
弥堂くんのようなクズ人間は社会の中で常に生きづらいです。更生しないのなら言わずもがな、更生しようにも簡単には出来ません――というか、更生なんてほぼ出来ません。
そんな彼は今回清祓課やGOHSTに取り入ろうとしていました。
だけど結果はあんなことに。
公務員に就職しようとしてたのに、結局薄汚いBARで周りに居るのはヤクザやチンピラ。汚いことをして手に入れた金は泡と消えて、また繰り返す。そんな環境から一生抜け出せない。
クズの生き様を描く上で避けては通れないことですね。
このまま愛苗ちゃんを連れたまま裏街道一直線になるのでしょうか。
「あとがき先出しの件」
そんなクズたちを肯定するわけではないのですが。雨ノはどうしようもない人たちをちょっと擁護したくなってしまう性質で。
それが先出しで書いたものの意味です。
この物語内では組織に属さない異能者のことを「外法師」(ハグレ)と呼びます。ミラーさんはそのハグレのことを「外法師」(レモン)と呼びました。
「LEMON」は多分アメリカ?のスラングで「不良品」という意味です。2章のラストで名前の無いBARに居た連中のことですね。
2章全体のテーマが「DEMONed I Scream」だと先出しで書きました。「DEMON」を「LEMON」に置き換えたものが答えですね。
『他人は興味なかったりもしかしたら眉を顰めるものかもしれないけど、オレはこれが好きなんだ』
これは雨ノの言葉ではなく、元ネタの作者さんが↑の答えに込めた意味だったと思います。かなりうろ覚えですが、確か大体そんな感じだったはず。
それを2章のEDでお借りしました。
これに対する雨ノの考えというか思うことがあるのですが、それは本編で描いて行こうと思います。
先出しの繰り返しになりますが、↑の答えを検索して、ラストのトーマスがボリュームをグイっと捻るタイミングでスタートです。
答えを見つけてくれると嬉しいです。
「能力の話」
そんな2章ですが、一応主人公強化イベントでもありました。
1章で覚醒した弥堂くんは気分が変わったのか速攻で勇者のチカラをナイナイしてしまいました。覚醒詐欺ですね。
大きな戦いに勝利したのに何故か弱体化する主人公のままではいけないので、零衝の強化イベントとなりました。
1章では才能というかスペックでの強化でしたが、2章では技術面での強化です。これは降って湧いたものではなく、彼がこれまで身に着けてきたものの開花という違いになっています。
開花ではあるものの、女に頼ったものなのも弥堂くんらしいですね。
「零衝」
零衝の捌式。
要は必殺技ですね。
零衝の秘奥義、そして魂の牢獄。
『序章11 眼窩の窓』から始まって途中色んな話で少しずつ触れながら進み。
2章の『2章32 DEMONed I Scream』『2章33 朔』『2章34 零ノ捌キ~Eighth note beats feel FREE to DEATH~』で一旦アンサーになった気でいます。
『眼窩の窓』で唐突に垂れ流された弥堂くんの頭の中の意味不明な怪文章。
自分というモノは肉体の裡のどっかに閉じ込められていて、それを魂の牢獄と彼は呼びました。
その牢獄には穴が空いていてその外に拡がるのは『世界』。
その小さな穴が眼窩の窓で、そこから見える空を牢獄の空と言ってました。
ずっと檻に塞がれていたので彼は空に閉じ込められていると感じており、しかし1章の最後の方で、窓を塞いでいた檻が外れて牢獄の空が晴れたと言いました。
2章ではデート編で牢獄に何かが隔離されていると言い出し、そしてレイス戦で牢獄の窓から外の『世界』へ解き放ったのが零衝の捌式という流れでした。
この先でもっと何か明らかになるものがあるのかないのか…
『魂の設計図』
その輝きの強さが存在としての強さになり、それを魂の強度と弥堂くんは呼んでいます。
1章で「魂の強度と戦闘力の強さは必ずしも直結しない」という話が出てきましたが、2章にその一例があります。
それは弥堂くん、ではなく傭兵団のボスのアレックスです。
弥堂くんは魔眼で視て、アレックスの魂の強度はビアンキよりも強いと評価しました。
戦闘能力で云えば、アレックスよりも獣人のビアンキの方が強いです。アレックスは異能力者ではないので、下手したら名もなきGOHSTの魔術師たちの方が強かったりするかもしれません。
しかし、今回色んな勢力の敵が出てきましたが――武装した兵士、魔術師、獣人、人狼、レイス……
その中で、弥堂くんを殺すことが出来たのはアレックス唯一人でした。
魂の強度というものを考える時の参考情報に。
「最後に」
とりとめがなくなってきてしまいましたが、弥堂くんを語る上で今回欠かせないというか、最も物議を醸すであろうことが「ミラー殺し」です。
次の記事ではそのミラーさんについて。