魔力蓄積石《まりょくちくせきせき》
魔鉱物であり、魔力を保持する特性がある。
魔力蓄積石は、通常物質の結晶格子の中に“魔素”が物理的・構造的に組み込まれたハイブリッド結晶である。
魔素や“魔子”、魔子の移動によって生じるエネルギーである“魔力”は、重力と未知の力による相互作用しか持たない為、通常の鉱物を構成する原子とは直接干渉することはできない。
つまり魔素が通常の物質と共に鉱物の構成元素として組み込まれることは難しい。
では、魔力蓄積石とはどうやって生まれるのか。
それは、惑星が形成される過程や、地殻変動に伴う超高圧・超高温の地下深くといった極限環境においてのみ誕生する。
鍵になるのは、物理学におけるファンデルワールス力、“ロンドン分散力”です。
電気的に中性な分子同士でも、電子の動きのゆらぎによって瞬間的に極性が生まれ、引力が働きます。
魔素は強力な“未知の力が作用する空間”を持っています。
通常物質自体は魔荷を持っていなくても、極限環境下では、電磁気力や強い力と未知の力が分化する前の状態(大統一理論的な力の交差)に近づき(あくまで気の遠くなるほど本当に本当に僅かに近づくだけ)、通常物質の素粒子の真空のゆらぎに、一時的に未知の力との相互作用、“誘起魔荷”が生じる。
磁石に引き寄せられた鉄が、一時的に磁石になるようなイメージです。これにより、極限環境下でのみ発生した“一時的な引力”によって、通常物質の結晶構造の隙間に魔素がガッチリと入り込み、温度や圧力が下がった後も物理的な“要石”として抜け出せなくなったものが魔力蓄積石です。
そして魔力蓄積石が、未知の力にしか相互作用しない魔子の移動によって生じるエネルギーである魔力を保持できる理由は、下記の通りである。
魔力蓄積石が魔力を保持するための土台となるのは、石そのものが放つ“未知の力が作用する空間”である。
魔子は“スピン1/2”を持つフェルミ粒子であり、移動に伴って未知の力が作用する空間を発生させる。
これは電子の移動が磁場を生む法則と同義であり、スピン1/2を持つ魔子、およびそれを内包する魔素は、単体でも極小の未知の力が作用する空間を発生させる、“双極子のような性質”を有している。
魔力蓄積石の強固な結晶格子内に高密度で固定された魔素たちは、物理的に身動きが取れない状態にある。
すると、鉄の内部で電子のスピンの向きが揃って“永久磁石”となる現象と同様に、石の内部に固定された膨大な魔素のスピンがすべて一方向に整列する。
生物の細胞が魔力を流すことで一時的に空間を作るのとは異なり、魔力蓄積石は、スピンの揃った魔素によって石全体を覆う(覆うと言っても石自体と未知の力が作用する空間の外周の距離は極めて小さい)恒久的な未知の力が作用する空間、“半永久的に続く未知の力の場”を常に発生させ続ける状態となる。
恒久的な空間が発生しているだけでは、エネルギーである魔力を保持することはできない。魔力の保持を可能にしているのは、“位置エネルギーの勾配が極めて急である”という未知の力の絶対的な特性である。
半永久的な未知の力が作用する空間を放つ魔力蓄積石の内部は、物理学的に言えば極端に深いポテンシャル井戸、“位置エネルギーの底なし沼”を形成している。
外部からこの石に魔力、“移動する魔子”が流し込まれた瞬間、質量がごく僅かで慣性の極めて小さい魔子たちは、この急勾配のポテンシャル井戸の底へ一気に転がり落ちる。
ここで重要になるのが、魔子は重力と未知の力にしか相互作用を持たないという点である。
魔子は通常の物質、原子や電子とは電磁気的な摩擦や抵抗を一切起こさない。
そのため、ポテンシャル井戸の底に落ちた魔子たちは、石が作り出す未知の力の空間の急勾配の壁の中を、超伝導リングを回る電流や、磁気ボトルに閉じ込められたプラズマのように、超高速で永遠に反射・周回し続ける。
以上が、魔力蓄積石が魔力という質の高い内部エネルギーを、減衰させることなく純粋な状態で保持し続けられる理由である。