『クロとシロ —のじゃ!のじゃ!シイロイさん小話—』
著者:NICO & pigro-f
——映画監督なのじゃ!——
※本編とは関係ありませんのじゃ!
「“お前”のお菓子を食べてやる!!」
「にゃ、にゃ~ん」
頭から顔の描かれたシーツを被ったお化けに驚かされ、コワコワと後ずさるクロマル
「カット!なのじゃ!」
声が響く。
「素晴らしい演技だったのじゃ」
腕に「監督」の腕章をつけたシイロイ監督は、感動してサングラスを少し持ち上げ、そっと涙を拭いた
「さすが、世界中の賞を総ナメした演技派ニャンコ、クロマルなのじゃ
観ているこっちまで、コワコワ恐怖を感じたのじゃ」
ベタ褒めされ、クロマルは嬉しそうに尻尾を揺らす
「にゃ~ん♪」
そこへ、シーツを被ったコワコワお化け役が、おずおずと声をかけた
「シイロイ監督、少しいいですか?」
「どうしたのじゃ?」
「僕、思ったのですけど……
いくらお化けでも、相手に向かって“お前”と言うのは、少しひどいのではないかと……」
「なーんと、そんなセリフあったかのう?」
ペラペラと台本をめくるシイロイ監督
「……あったのじゃ!!」
ガーンなのじゃ!、と効果音が鳴りそうな勢いで目を見開く
「これは駄目なのじゃ!
こんなセリフがあったら、上映禁止になるのじゃ——!
大変なのじゃ!」
アタフタと慌てるシイロイ監督に、コワコワお化け役が助言する
「その部分を、“クロマル”に変えたらどうですか?」
シイロイ監督は、メガホンをポンッと叩いた
「素晴らしいアイデアなのじゃ、採用!」
少し考え込み、
「……いや、待つのじゃ
クロマルはかわいいから、“かわいいクロマル”にするかのう?」
ペンを持った瞬間、コワコワお化け役が続ける
「クロマルは頭も良いです
“かわいくて頭の良いクロマル”の方がいいと思います」
再び、メガホンが鳴る
「それ、採用なんよ!
“かわいくて頭のいいクロマル”に変更なのじゃ!」
すると、周囲のスタッフから次々に声が飛ぶ
「クロマルは笑顔が素敵です!」
「尻尾がチャーミングです!」
「いつもご飯を美味しく食べます!」
……
……
しばらく聞いていたシイロイ監督は、大きく頷いた
「のじゃ! 全部採用なんよ!
そして——撮り直しなのじゃ!」
机に向かい、猛烈な勢いで台本を書き直す
「のじゃ、のじゃ、のじゃ——!」
そして——
「できたのじゃ!」
ニッコリ笑ってメガホンを振り回す
「皆の者、準備はよいか!
撮り直しを始めるのじゃ————!!」
スタッフたちが一斉に動き、再び撮影開始
「のじゃ!
シーン0801、スタートなんよ!」
シーツを被ったコワコワお化けが、ゆっくりとクロマルに迫る
「かわいくて、頭がよくて、笑顔が素敵で、尻尾がチャーミングで、いつもご飯を美味しく食べて、そして——」
——ここから1時間、クロマルを褒めるセリフが続く
「——クロマルの……お菓子……を……食べて……や……る……」
セリフを言い切ったお化け役は、力尽きて椅子に座り込んだ
「ハア……ハア……」
クロマルは、そっとお菓子を咥えると、
「にゃ~ん♪」
と、お化け役に差し出した
「感動の作品なのじゃ! 世界をとれるのじゃ!」
シイロイ監督は腕組みをし、何度も何度も頷いていた
——おわり——