最近の改稿とは別に、今後少しずつ本文末へ補足を追加していこうと思っています。
この作品は、技術チートものというだけではありませんが、そういう要素もかなり含んでいます。
ところが改めて読み返してみると、
「作中ではすごいことが起きている」
「登場人物も、それなりに驚いている」
ところまでは書いていても、
「では、それの何がどのくらいおかしいのか」
という比較軸を、読者にほとんど渡していなかったことに気づきました。
たとえば序盤の8話に出てくる、リュネットがハインリヒへ船を買わせるために組んだ取引。
一見すると、「中世っぽい世界で高度な金融をやっているからすごい」という話にも見えます。
しかし、この作品の時代イメージである十五世紀末頃には、現実のヴェネツィアやフィレンツェでも、遠隔地との信用取引、為替、商人への出資、海上交易への資金提供などはすでにかなり発達しています。
つまり、おかしいのは「こんな時代に金融を使った」ことではありません。
昨日町へ現れたばかりで、家柄も商会も取引履歴もない少女が、純金を大量に預けた翌日、その信用を使って、自力では船を買える信用のない一人の商人へ巨額の資金を流す構造を作り、しかも両替商のヘルヴェルトまでそれを理解した上で自分の金を乗せている。
そちらの方がおかしい。
こういう部分は、本文の流れを止めてまで説明することではないと思っていたのですが、何も説明しないと、「なんかすごいことをやったらしい」で通り過ぎてしまうことも分かってきました。
技術についても同じです。
クレーンが出てきたなら、単に「重い物を楽に持ち上げられます」だけではなく、それによって荷役事故、必要人数、船の停泊時間、港の配置や扱える荷物まで何が変わり得るのか。
新しい建築技術なら、史実では同じ時代に何ができていて、作中で新しいのはどこなのか。
そういうところです。
もちろん、毎回長大な解説を付けるつもりはありません。
本文はあくまで、その世界に生きている人たちの物語として進めます。
そのうえで、特に意味の大きい技術、商売、金融、制度などについては、話の末尾に「補遺」のような形で、
・当時の現実世界ではどの程度まで存在したのか
・作中の何が普通で、何が普通ではないのか
・それが普及すると何が変わるのか
あたりを補足していこうと考えています。
この作品は技術チートでもあり、商売の話でもあり、人間の話でもあり、長い目で見れば歴史が変わっていく話でもあります。
どれか一つだけにするつもりはありません。
なので、「すごい技術が出ました。主人公すごい」で終わらせるのではなく、その技術や仕組みが、当時の社会のどこに接続され、何を変えていく可能性があるのか。
そこまで含めて、もう少し読者に見える形にしていこうと思っています。
以下、本作へのリンクです。
https://kakuyomu.jp/works/2912051601778491405