唐突ではない時は過程を自覚しているから「思えば随分変わったかもな」と思うだけで、結局の所変わらないものはないのかもしれない。だとしても、昨日までと全く異なる生活が始まるなんてのは、どうしたって唐突だ。
一年のうちに両親が亡くなった。同年代に比べたら親は若い方だと思っていた。父に関しては全くの前触れさえなかった。あまりの突然さに事件性を疑われて警察やなんやで多少の面倒があったほどだ。
法事が落ち着いたあと、実家を修繕し始めた。少なくとも妹がここに住むことになったからだ。俺は、まだ分からない。築70年近い家はひどい有様で、床が抜けてるわ、冬には氷点下になるわ、とてもこのままでは住めない。とはいえ両親は住んでいたはずなのだが。その謎は律儀に取っておかれていた光熱費の記録を見て判明した。あり得ない、あり得ん金額がかかっている! もし住むとしても俺たちにこんな光熱費を払う気はない。
家を売るってのもなかった。家自体はまぁ資産価値はないに等しいし、相続税が問題になるような場所じゃない。俺も妹も価値を感じているのは家よりも祖父や母が育てた山野草で埋め尽くされた庭で、この土地がつぶされて分筆されて狭っ苦しい家が数軒建つんだろうと想像すると、言いようのない喪失感と腹立たしさが沸き起こってきた。俺たちの意見は一致し、とりあえずこの家をまともに住める状態にするミッションが始まった。
それが去年の9月。
初めは2カ月かそこらしたら自宅に戻るつもりだったのだが。なんてこった、今これを書いているのは実家の仏間に置かれた布団の上だ。数日前には母の一周忌だったから、まだここには花の香りが漂っている。本来寝床になりえるだろう二部屋はまだ人の住める環境ではない。片方は作業場に成り果てていて、もう片方はまだフローリングを張っていない。始めに改修をはじめた仏間と居間がまともだから、俺たちはそこにそれぞれ布団を敷いて夜を過ごしている。
何か月経ったんだっけ?
きゅう、じゅう、ああ、は?
そろそろ半年経つ? そんなばかな。
いやいや、ありえない。正月には水道がぶっ壊れたばかりで、廊下の漆喰は塗り直している真っ最中だ。半年近くここで夜を過ごしたって? そんなばかな……いつ終わるんだこれ。
時々、これは現実なのだろうかという気分になる。
あの日から、IF 時空にいるような感覚がある。現実で間違いないはずなのに、変化はあまりにも唐突で俺の精神が追いついていない。一体いつになったら、これが当たり前になるのだろう。
気はどうであれ身体は動く。俺も妹も黙々と家を修繕している。それをしている間は、世の細々を考えないで済む。PC がまともな場所に置かれていないから、あれだけ日常になっていたネトゲにも全くログインしていない。早く寝て早く起きる生活。すっかり、カクヨムの存在も忘れていた。
ふと思い立って、近況を書くに至る。