私が住む「ノートタウン」には捨てられた楽譜で作られたと謂れのある「気取りやロード」なんて呼称されている1本道があります
元々は「ノートタウンのウィッチロード」なんて通り名が付いていたんですけど
元の名前が気取っているように感じた誰かが〜とかではなくてぇ...えーっとぉ...
先にウィッチロードのお話をしましょう、今から約500年も昔の話になります
大通の終わりには、とっても大きな屋敷があって、そこに住む魔女は、幾《いく》100もの作曲家に歌を奏させていたらしいんです
作ったメロディーを魔女が気に入れば屋敷に招待されて、どんな楽器でも言えば手に入る、なに不自由のない魔法の部屋で作曲活動が出来るんですって
けどね、魔女ってばとっても飽きっぽくってね
音楽にマンネリを感じてきちゃうと今まで作曲させていた音楽を作曲家ごと屋敷の外にぽいって捨てちゃうんみたいなんです
そうなったら最後、門をなん千なん万回叩いても、どんなに新しい曲を奏でても絶っっっっっ対!に入れてもらえないんですって
何年もそんなことが続くものだからノートタウンのウィッチロードには屋敷に戻りたい音楽家たちの群れが出来ちゃって
…それでね、ここからが悲惨なんですけれど
屋敷の前に溢れかえった音楽家たちは今まで散々よくしてくれた魔女に復讐を、だなんて考えたそうです
けれど、窓に岩石を飛ばそうが思念の詩を綴ろうがダメージなんて無いようなもので徒労を極めてしまって
おしまいには屋敷に火を放てだなんて言い出すものだから魔女はもう大憤怒の絶頂に達しました
「お前たちは死ぬまで歌っていればそれでよい」なんて呪いを謳ったそうです
それからというもの、作曲家たちは昼夜問わず歌い続け、歌を譜面に記し、やがて譜面は道を作りました
これがノートタウンのウィッチロードの伝承です、恐ろしいお話ですね
それからしばらくして
その伝承を聞きつけた自称ミュージシャンたちがノートタウンのウィッチロードを占拠して勝手に自分たちのスペースを構えてナワバリなんて言い出したと思えば
愛だの恋だの夢だの希望だの世界は糞だのなんだのって声を歌に乗せては24時間365日または364日絶える間もなく
独自の思いを声に乗せては各々の正義を我が物顔でお茶の間にお届け中ですよ
そんな自由に正義を歌う紳士淑女の諸君を皮肉る意味を込めて「気取り屋ロード」なんて呼ばれ始めたそうです
そんな先代が残した屋敷には今日も気取り屋たちの歌が幾重にも不協和音として流れ込んでは転調を繰り返している現状です
防音素材で外壁が作られているそうですけど本当でしょうか、だいぶ騒がしいです
あの人たちが作る音は嫌いじゃないけれども、特別好きってわけでもないんですよね、よく分からないっていうのがこの場合適切なんでしょうか
そんな感想は棚にでも乗せて置きましょう、今は…そうですね、この前拾ったドラムの音で育つお花が欲しいです
この品種では珍しい青色の花を咲かせるよ
なんてお花屋の橢円さんに勧めてもらった種だから大事に大切にお水をあげて咲くのを楽しみにしているのに
外からの不協和音はなんでかダリアの成長を妨害します、なかなか芽が出てきません
まぁ、これは私の育て方の問題ですね、あの人たちを責めるのはなんか違います、宇宙より遠く反省しましょう
あぁそうだ、とても長いあいだ名乗り遅れてしまっていました
私の名前は輪鳥美流歌《わどりみるか》っていいます
10月5日に爆誕した天秤を司る……んーっと、新進気鋭のぉ……人を喰らってぇ…血肉をぉ………いやいやいや!魔女でもそれはジャンルが違うやつじゃないですか!
ふへへ…こほん、ま、まぁな、なにかに取り柄があるかもしれない他称魔女です、お見知りおきをお願いしましたのでよろしくですよ