眉を下げる青年は、余りにも年相応に見えた。
ここまで考えてなんだが、やはり私はこの時、人間観察をしてしまったと言う事実に打ちひしがれていた。
「いえ、、、大丈夫です。」
やっと口に出した言葉は余りにも小さくて、弱かった。
「私は桂秋月。ここで塾をしてる。君は?」
桂と言うと、藩主様の分家か。
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「本当にここまでで良いんですか、、、?」
「すまないね。これ以上は私も思い出したくないもので。」
ランタンの光が当たりを照らす中、向かい合った2人は何やら深刻な話をしているようだった。
歳をとった老人と、新聞記者だろうか?若い青年。老人がポツポツと昔話をして、記者の男がそれをメモしている。そんな構図だ。
しかし何を隠そうこの老人が北條本人である。すっかり歳をとり、かつての幼さはもはや欠片も感じない。
記者の男に別れを告げ、部屋の奥に引っ込んで行った。
部屋の中で北條は昔のことを思い出していた。
「俺は君になりたかった。」
あれは、夏も終わりかけ、残暑が身を引く季節だった。サングリアを飲みながら君は僕にそんなことを言ったね。
君が何を思ってそう言ったかなんて俺には分からなかったけど。あの時止められてたらって、ずっと後悔してるんだ。
ただ、そんな懺悔を。ずっと。ずっと。
【神様なんて居ない。】
分かっていた。頭では理解していた。でも、それでも、どうしても何かに縋りたくて。
「君も同罪なんだから」
笑う彼が頭から離れない。俺は違うと、誰か言って___
そんな彼を置いて。夜は更けていくのだった。
【了】