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そして自分の予定をまた破る

予定になかった物語「魔神の日」をちょい長い物語でかきます。ムーンショット2部の章として。
まあ、あの……アポカリプスです。終末小説です。ミハエルの星(火明星(ほあかりぼし))ではなく、ミハエルの時空の地球でもなく、パラレル地球。
主人公は月日リアナ。魔神の日までは、普通に大学何となく通ってた大学2年生。20歳。
設定資料↓
https://www.seaart.ai/ja/postDetail/d5gf95de878c73dts080


プレビュー↓


「……嘘」
 思わず、声が漏れた。信じられない光景だった。
 眼下の、ひび割れたアスファルトの路上を、複数の「何か」が徘徊していた。人型に近い輪郭を持ちながら、その動きは人間のものではなかった。関節が異常な方向に曲がり、ぬらりとした黒い体表が、わずかな月明かりを鈍く反射している。頭部と思しき場所には、ぎらぎらと光る赤い点が、複眼のように蠢いていた。悪魔、と月日リアナの脳が短絡的に結論付けた。それ以外に、あの異形を表現する言葉を知らなかった。


 奴らは何かを探すように、あるいはただ破壊を楽しむように、道をうろついている。一台のひっくり返った乗用車の窓ガラスを、鉤爪のついた腕で叩き割り、甲高い満足げな声を上げた。
 リアナは口元を手で覆った。吐きそうだ。あれが、あの音の正体。あんなものが、この世界にいたなんて。今まで幸運だっただけなのだ。ただ、見つからなかっただけ。自分の築いたささやかな安全圏が、いかに脆い砂上の楼閣であったかを思い知らされる。
 恐怖で身体が凍りつき、目を逸らすこともできない。ただ、見ていることしかできなかった。


 その時、異変が起きた。
 徘徊していた悪魔たちの動きが、まるで古い映画のフィルムが止まるかのように、一斉に、不自然に停止したのだ。さっきまで車を破壊していた一体も、振り上げた腕をそのままに、ぴたりと固まっている。
 そして、全ての悪魔が、同じ行動をとった。
 ゆっくりと、ぎこちない動きで、天を仰ぐ。その赤い複眼が、夜空の一点に向けられている。まるで、見えざる指揮者のタクトを待つオーケストラのように。


 リアナもまた、つられるように空を見上げた。
 何があるというのだろう。雲が途切れた夜空には、ただ、冷たい星々が瞬いているだけだ。


 次の瞬間だった。
 世界から、音が消えた。リアナの視界が、真っ白に染まる。いや、白ではない。青白い閃光。網膜を焼き切るほどに強烈な光が、空の一点から迸り、夜の闇を完全に消し去った。リアナは咄嗟に目を固く閉じたが、瞼を透過して、光は脳の裏側まで染み渡るようだった。
 光が収まった時、リアナは恐る恐る目を開いた。そして、息を呑む。
 空から、何かが落ちてくる。
 それは、青白い光の残滓を引きずる、黒い人型の影だった。速い。だが、落下というよりは、舞い降りる、という方が的確な、優雅ささえ感じさせる動き。
 悪魔たちは、その影に向かって一斉に威嚇の声を上げた。しかし、影が地上に到達する方が早かった。


 影が着地したのかどうか、リアナの目には捉えられなかった。ただ、影が地上に触れた、あるいは触れる寸前の一瞬、再び世界が無音になった。そして、影を中心に、青白い光の波紋が同心円状に広がった。


 それは、一瞬の出来事だった。


 薙ぎ払う、という言葉そのままに、光の波紋が通り過ぎた後には、何も残っていなかった。さっきまでそこにいたはずの異形の悪魔たちは、影も形もなく消え去っていた。まるで、最初から存在しなかったかのように。
 路上には、ひっくり返った車と、砕けたガラスの破片だけが、静かに横たわっている。


「…………」
 声が出ない。呼吸の仕方も忘れてしまった。心臓だけが、肋骨を内側から叩き壊さんばかりに暴れている。
 恐怖。驚愕。そして、理解を超えた、圧倒的なまでの力の奔流。
 大学二年生、月日リアナ。教育学部の、ごく普通の女の子。彼女が二十年間で築き上げてきた現実、常識、世界の法則、そのすべてが、今この数秒間で、根底から覆された。
 リアナの視線が、震えながら、路上の一点に吸い寄せられる。


 光が去った後の静寂の中に、その人影は立っていた。
 遠い。ここからでは、表情どころか、性別さえもはっきりとは分からない。だが、そのシルエットは、間違いなく人間のもので、そして、リアナが今まで生では見たこともない服を纏っていた。
 アニメでは定期的にその服装のキャラはいる。
 闇の中で、それは鮮やかすぎた。雪のような白。血のような赤。
 巫女装束。
 リアナの脳裏に、知識としてだけ知っていたその言葉が浮かび上がった。なぜ、こんな場所に、そんな格好の人間が?いや、そもそも、あれは、本当に―――。
 思考が追いつかない。だが、リアナの魂は、直感で理解していた。
 あれは、違う。
 この世界の存在ではない。


圧倒的な非日常。絶望的なまでに美しい、破壊の光景。その中心に立つ、静かな人影。
「これ、さー。紀元前4世紀に飛ばされた時のマケドニアの兵士の方が強かったって! アララララーイ!! アララララーイ! マケドニア! クラテロス! エウメネス! アレクサンダー!」
 誰かに話しているわけじゃない。独り言だ。大きな。うるさい。
リアナは、窓枠にすがったまま、ただ立ち尽くすことしかできなかった。廃墟の街に訪れた、異世界からの来訪者。その存在が放つ静謐なオーラは、先ほどの悪魔たちが振りまいた恐怖とは質の違う、神聖さすら帯びた畏怖を、彼女の心に刻み付けていた。


 さて巫女姿の女は誰でしょう! ヒント:苗字がペガサス
 下の絵でも答え言ってるようなもんだわな。

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