絵はホワイトライガーの寝起きドッキリに失敗したアン=ローレン
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「しかし、ミハエル。その『仮想の存在』とやらで得た勝利に、真の価値はあるのか? わたしが知る戦場は、剣と剣がぶつかり合い、火花と共に命の重みを感じる場所だ。画面の向こう側で、顔も見えぬ者たちに媚びを売ることが、この娘の持つ『騎士の誇り』とどう折り合いをつける?
……まあ、わたしが『戦士の特性』をその3Dモデルとやらに付与してやれば、データ上の存在であっても、見る者の魂を物理的に震わせることは可能だろうがな。代償として、わたしの次の食事は、さらに豪華にしてもらうぞ」
ブラックヴァルキリー・カーラの言葉には、仮想という概念に対する根源的な懐疑と、同時に、新しい「戦場」への隠しきれない好奇心が同居していた。彼女はすでに、フェルミナを「導くべき魂」ではなく、「共に猟場を駆ける若き獣」として認識し始めていた。彼女の黄金の瞳には、画面越しに世界を蹂躙するフェルミナの幻影が映っているようだった。
部屋の入り口付近では、メイド長のレアが、完璧な角度で一礼したまま、石像のように佇んでいた。彼女のエメラルドグリーンの瞳は、主人の突飛な提案と、それを取り巻く混沌とした反応を、淡々とデータとして処理していた。
「マイ・ヤング・マスター、並びにフェルミナ様」
レアの声は、一切の感情を排した、磨き上げられた銀食器のような輝きを持っていた。
「アイドルの定義が、大衆の視線を釘付けにする『偶像』であるならば、その管理と整理は、メイドの本分である『完璧な秩序の維持』と何ら変わりはございません。ミハエル様が提示された『仮想アイドル』という戦略、その実行に必要なリソースの調達、およびフェルミナ様のスケジュール管理、さらには『わ~ちゃんねる』における不適切なコメントの物理的な排除……。これらはすべて、私の業務範囲内として処理可能でございます」
レアは、手帳を音もなく開き、羽ペンを走らせた。その項目には、すでに「アイドル活動に関するロジスティクス支援」という文字が、優雅な筆致で刻まれている。彼女の鉄面皮の裏側には、この屋敷に訪れた新たな「無秩序」を、いかにして最高の効率で「管理」するかという、メイドとしての静かな情熱が燃えていた。
「フェルミナ様。衣装の選定につきましては、騎士の礼装をベースにしつつ、画面越しでも視認性の高い、光学的効果を狙った素材を検討いたします。……覚悟はよろしいですか?」
彼女の問いかけは、単なる確認ではなく、これから始まる「管理された混沌」への招待状でもあった。レアの視線は、フェルミナのツインテールの角度一つにまで、完璧な演出の可能性を見出していた。
