絵は「血の竜巻」のメンバー
ヘスラー=ヴァイツゼッカーと現剣魔アルヴェロ=カルティエと組織を抜けた後の剣魔ミハエル=シュピーゲル=フォン=フリードリヒと、
組織とは何の関係もない東雲波澄。
広大な玉座の間。天井のステンドグラスはすべて叩き割られ、そこから冷たい雨が容赦なく降り注いでいる。
玉座へと続く階段の途中に、二人の男が立っていた。
一人は、身長が二メートル半を超える巨漢。赤い髪を逆立て、岩のように頑強な肉体に長大な大剣を背負っている。ヘスラー・ヴァイツゼッカー。
そしてその隣で、気だるげに剣の柄に手を乗せている金髪の青年。大学生のようなカジュアルな雰囲気を漂わせながらも、その細められた紫色の瞳には、底知れない狂気が宿っていた。アルヴェロ・カルティエ。
「久しぶり。ミハエル」
アルヴェロが、まるで街角で旧友に出会ったかのような軽い調子で手を振った。
波澄は無意識のうちに魔符を構え、身を低くした。全身の産毛が逆立つ。この二人がここにいる意味を、彼女は痛いほどに理解していた。「血の竜巻」の頂点に君臨する怪物たち。
ミハエルが組織を抜けると宣言したあの日、彼とアルヴェロの間で行われた死闘の凄まじさは、波澄も噂に聞いていた。アルヴェロは、ミハエルを裏切り者として憎んでいたわけではない。ただ、組織で最も強い男の一人であるミハエルと、全力で殺し合える機会を失いたくなかっただけだ。その戦闘への狂信こそが、彼を突き動かす唯一の衝動だった。
ミハエルは剣を構え直すことなく、二人を見上げた。
「ヘスラー。それにアルヴェロ。……何をしにきた」
「何って、見物だよ」
玉座に座っているアルヴェロは肩をすくめ、玉座の背後に広がる黒い渦を見やった。「魂の黒刃」の本体が、不気味な光を放ちながらのたうっている。
「王都が滅びるっていうからさ。面白いものが見られると思ってね。でも、期待外れだったな。貴族どもは戦いもせずに逃げ出すし、魔物たちは弱すぎる。
それにしても、玉座って座り心地がいいんだねぇ。すっかり気に入ったよ」
「お前たちがここを荒らしたわけではないのだな」
ミハエルの問いに、ヘスラーが重苦しい声で答えた。
「俺たちが手を下すまでもねーよ。自滅だ。ミハエル、お前は相変わらず、こういう無駄な火事場に首を突っ込むのが好きだな」
ヘスラーの視線が、ミハエルの隣に立つ波澄へと向けられる。その巨大な圧迫感に、波澄の呼吸が一瞬止まりそうになった。だが、彼女は視線を逸らさなかった。
「……そこの女を守るために、剣が鈍ったか?」
「試してみるか、ヘスラー」
