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三撃必殺

 海賊KING完成させたので次の執筆中の三撃必殺の一場面。
 ギャラリー黒竜の物語です。
 つまりフィオラ=アマオカミとブラックヴァルキリー・カーラ、レティチュ=ド=エーロと、月日リアナは出ること確定。
 プレビュー↓


 静寂。それは、会場に満ちた熱狂が一点に凝縮され、爆発する直前の、耳が痛くなるような空白だった。
 300,000,000ウサギ。この国の平均的な労働者が一生をかけても手に届くか怪しい大金が、わずか数秒、たった一言で投げ出されたのだ。それも、品物の正体が半分も明かされていない「第一撃」の段階で。
「……決まり、ですね」
 オークショニアの仮面の奥で、瞳が冷徹に光った。彼は手にした銀のハンマーを、躊躇いなく振り下ろす。
 カツン、と硬質な音が響いた。
「第一落札者確定! 3億ウサギ、後方の紳士!」
 その瞬間、ステージを覆っていた半透明の膜が、音を立てて砕け散った。魔法の霧が晴れ、そこにあった「真実」が白日の下に晒される。
 現れたのは、美しい金の装飾が施された、青い宝石の首飾りだった。
「おお……!」
 会場から感嘆の声が上がる。確かに美しい。中央の青い石は、深海の底を切り取ったような神秘的な輝きを放っている。落札した男は、勝ち誇った顔で胸を張り、周囲の視線を浴びていた。


 だが。
「……ふふっ」
 フィオラの唇から、小さな、しかし氷のように冷ややかな失笑が漏れた。
「フィオラさん?」
 レティチュが不思議そうに首を傾げる。エルフの鋭い感性を持ってしても、その首飾りが偽物であるようには見えない。むしろ、溢れ出す魔力は本物の古美術品そのものだ。
「あのおじさん、大勝利じゃないんですかー? あんな綺麗なもの、3億でも安い気がしまーす!」
「そうね、レティチュ。見た目だけならね」
 フィオラは扇子で顔の半分を隠し、赤い瞳をさらに細めた。彼女の視線は、首飾りの美しさではなく、その「裏側」を射抜いている。
「カーラ、あなたなら分かるんじゃない? あれに宿っている『重み』がどれほどのものか」
 振られたカーラは、不機嫌そうに腕を組み、鼻を鳴らした。彼女の黄金の目は、霊的な本質を見通すヴァルキリーの審美眼を宿している。
「……空っぽだ。表面には高密度の魔力が塗りたくられているが、芯がない。あれは『歴史』を食べていないな」


「えっ、空っぽ?」
 リアナが驚いて目録とステージを交互に見る。リアナは「普通」の人間だが、フィオラの元で働くうちに、真作が持つ独特の空気感というものを、肌感覚で学び始めていた。


「ええ。あれは、魔導帝国時代の形式を完璧に模倣した、現代の魔導工作品よ。三撃必殺の第一撃で見えた『青い石』……。あれはサファイアですらない。『魂吸い(ソウル・イーター)』の幼生を加工した、合成樹脂の一種ね。
 あと数時間もすれば、あの輝きは黒く濁り、身につけた者の生気をちまちま1000年かけて吸い始めるわ。ホントに少しずつだから気づかないでしょうね。霊力なければ。
 えぐいもの出すわね~~」
 フィオラの言葉が終わるのとほぼ同時に、ステージ上で首飾りを受け取ろうとした男の顔色が、わずかに青ざめたような気がした。首飾りの青い石が、心なしかドロリと、脈打つように揺れた気がした。
「……3億ウサギを払って、自分の命を削る呪いを買う。最高の喜劇だと思わない?」
「……全然思いません。怖すぎます」
 リアナが震える手でメモを取る。これが『三撃必殺』。一撃で決めるという慢心が、どれほどの破滅を招くか。その生々しい教訓が、最初の品物から提示されたのだ。



「さあ、余興はここまで。次が来るわよ」
 フィオラが座り直し、ドレスの裾を整えた。彼女の興味は既に、運ばれていった呪いの青い首飾りにはない。次にステージに置かれた、歪な形をした「何か」に注がれている。

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