• 異世界ファンタジー
  • エッセイ・ノンフィクション

見分けがつかない

https://www.seaart.ai/ja/postDetail/d8833qte878c739749bg
桜雪さゆと水鏡冬華の毎日の運動(ケンカ)
下の絵は十二支神獣族
プレビュー↓


ショーウィンドウの向こう、最新の流行を取り入れた絹のドレスを熱心に眺めている女の姿があった。
 その横顔を見た瞬間、カーラの背筋を冷たい感覚が走り抜けた。流れるような黒髪、深みのある茶色の瞳、そして見る者を射すくめるような、それでいて遊び心を隠しきれない独特の輪郭。それは、カーラがよく知る巫女、水鏡冬華のそれと寸分違わぬものだった。
「……闇霎(くらおかみ)か」
 カーラは小さく呟いた。その女は、冬華ではない。この王国の実質的な支配者であるミハエルの母であり、宇宙が生まれる前の無から存在し続ける黒竜神。姿形こそ部下である冬華に似ているが、漂う空気の密度が決定的に異なる。闇霎は、手に取った薄紅色の生地を指先でなぞり、その質感を確かめるように目を細めていた。
「あれで服も冬華と同じだったら、見分けつかんな」
 独り言は、雑踏の音に掻き消された。神が人の服を愛でる。その光景には、畏怖よりもむしろ、奇妙な親近感が漂っている。闇霎は創意工夫を尊ぶ神だ。彼女にとって、一枚の布をどう着こなすかという試行錯誤は、銀河の配置を考えるのと同質の、創造的な遊戯なのかもしれない。カーラは、その不可侵の領域を邪魔することを避け、意識的に視線を逸らして歩みを早めた。

コメント

コメントの投稿にはユーザー登録(無料)が必要です。もしくは、ログイン
投稿する