いつも『狂桜華』を読んでいただき、ありがとうございます!
今回は、作中に登場する「鯉口を切る」という動作について、少しご紹介したいと思います。
※以下、第六章までのネタバレを含みます。
第六章の最後で、朝凪が桜桃に忠誠を誓う場面がありましたね。
その際に登場した「鯉口を切る」という動作は、第四章でも少し説明しましたが、作中では近衛が儀礼の際に行う「近衛礼」にも取り入れられています。
そもそも「鯉口を切る」とは、刀を抜くための予備動作のことです。
日本刀の鍔を左手の親指で押し上げ、刀身を鞘からわずかに離すことで、素早く抜刀できるようにします。
『狂桜華』の「近衛礼」では、この正式な動作を採用しています。
そこには、
「帝のための刀は、いつでも抜ける。だが、抜くかどうかは帝の命による」
という意味が込められています。
一方、個人が生涯の忠誠を誓う際の所作には、決まった形がありません。
例えば、第一章の日向。
「左手で刀の鞘を押さえ、右手で柄を力強く握り込む。そのまま右肘を鋭く引き、鞘の口を押し開いた。」
日向らしい、力強く荒々しい動作です。
そして、第六章の朝凪。
「朝凪は、左手で刀の鞘を押さえ、右手を静かに刀の柄へ添えた。」
こちらは朝凪らしい、静かで無駄のない動作になっています。
同じ忠誠の誓いでも、その所作には、それぞれの人物の性格が表れています。
今後、再びこの動作をする人物が現れるかどうかは分かりませんが、こうした小さな違いにも注目していただけると嬉しいです!