水色です。
まずは、本作『その異世界転生は、美しき夢の続き』を最後までお読みいただき、心より感謝申し上げます。
初めて、異世界転生に挑戦させて頂いた作品です。
如月星奈という一人の不器用な少女が、黄金の夕暮れに染まる聖都エリュマントスで歩んだ軌跡を、こうして皆様と共に見届けることができたこと、作者としてこの上ない喜びに堪えません。
本作の根底に流れるテーマは、「数式で割り切れないものの美しさと、それを愛する強さ」です。
主人公の星奈は、当初、他者の感情をノイズとして切り捨て、安全な場所から世界を傍観する冷徹な「観測者」でした。
彼女が迷い込んだエリュマントスは、神ウルム・ソムニウムが見る完璧に管理された心地よい「夢」の箱庭。
しかし、その美しすぎる世界の裏側には、理不尽に抗い、泥を啜ってでも自らの足で立とうとする人々の熱量と、不都合なものを隠蔽する冷たいシステムが潜んでいました。
アネラスの不撓の意志、ハバルトの揺るぎない盾、メイの無垢な信頼、シフォンの妖艶なる観測、そしてヴィンセントが自らの命を燃やして遺した執念……。
そして何より、星奈にこの世界を「愛おしい」と思わせ、自らを犠牲にして崩壊の微睡みを繋ぎ止めた案内人・ノアの献身。
星奈にとって、彼らとの出会いは当初、冷たい計算式を乱す計算外の「変数」に過ぎませんでした。
しかし、共に汗を流し、傷つき、時には涙を流す中で、その変数こそが彼女の心を揺さぶり、やがて彼女自身をシステムの一部から、血の通った一人の「人間」へと書き換えていったのです。
物語の結末で、星奈はただ与えられたバグを消す「救世主」としての役割を捨て去ります。
ノアが守り、ヴィンセントが託したこの世界を終わらせないために。彼女は前世の揺るぎない物理定数――光速度、プランク定数、万有引力定数――を打ち込み、神の夢を「独立した現実」へと再定義しました。
「観測者」から、新世界の「設計者(アーキテクト)」へ。
それは決して平坦な道ではありません。
しかし、痛みや悲しみ、そして誰かを想う願いといった「感情という名のノイズ」こそが、冷たいシステムに命を与え、世界を繋ぎ止める最も強い力(体温)であるという祈りを込めて、この物語を描き切りました。
神の夢から覚めた彼らの空には、もう監視者の眼は浮かんではいません。
そこにはシステムに守られた完璧な平穏はないかもしれませんが、不完全で、愛おしい仲間たちと自らの手で創り出した「美しき現実の続き」が待っているはずです。
最後に、3月から始まった、星奈の不器用な歩みを見守り、彼女が愛した泥臭くも美しいバグたちを愛してくださった皆様へ、ありったけの感謝を込めて。
またいつか、別の次元の座標で皆様とお会いできる日を願っております。