いつもお読みいただきありがとうございます。mizuchiです。
今回はX上では宣言していた、神様TRPGの番外編です!
タイトルにも記載しておりますが、第53話の番外編となっておりますので、第53話のネタバレが全開です。絶対に53話を読んでからお楽しみください!
なお、作者のオススメは昨日更新した54話の後に読むのがオススメ。セシリア視点ですのでセシリアがどうしてあんな行動をとったのかという謎が全て解けます。
それではここから先が番外編となります!
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あの子は私がスパイだということを知っていてそれでもなお信じてくれた。
普通だったらスパイだと知っているなら警戒する。けれどあの子はしなかった。多分あの子の性格なのかもしれないけれどそれでも、スパイだと知りながら普段通りに接してくれたのはあの子が初めてだった。だからこそ私も気を許してしまったし、いつも通りに。どこにでもいる優しいお姉さんとして、このゼーレンの街の人にも。帝国軍の都市でも。演じてきたままの姿でいた。
だけどあの子は強化人間という存在を知った後。私に大丈夫だといった後から、少しずつおかしくなっていった。それはきっと、彼女に強化人間の存在を教えた、その夢のせいなのだろうけれど。隠し事が増えていくのが目に見えてわかった。だけれど、私はそれを問い詰めることはできなかった。私にもたくさんの隠し事があったから。その結果が今日。
私の隠し事は明かしていったつもりではいた。いずれ彼女が自分の隠し事と秤にかけて、話せると判断したその時にいつでも話せるように。だけれどその天秤が傾き切る前に。私の限界がきてしまった。
あの子の正体をはっきりさせなければいけない。はっきりさせることができれば、私も先送りにしていた決断を出せる……きっと。
リディア様に与えられた仮住居の鍵を開けて、一直線に向かったのは寝室。あの子が寝ているベッドだった。あの子は私が気付いていないと思っている。あの子が、珍しく大人しくしていた、この家で1人で留守番をさせた日。私が帰ってきた時にしまったメモの事を。
咄嗟に隠したメモに何が書いてあるのか。私は問い詰めることはしなかった。だけど、あの日の彼女の様子からそのメモにはきっと重大なことが書かれているに違いないと思っていた。
どこに隠しているかは知っている。王国や帝国には盗聴器という特殊な魔石で動く機械がある。短時間しか動かないものの、特定の単語に反応して起動し録音が開始される仕組みにすることで魔力消費を抑える最新式の王国の物がある。それに類するものが公国で開発されていてもおかしくないと思っていたから。私をこの家に住まわせる理由は私がボロを出すのを待っているのではないかと思っていたから最初に全部調べて、その時に見つけてしまっていたから。
彼女がいつも寝ている、ベッドのマットレスの下。そこにやはりメモがあった。もしかしたらこの一連の騒動で彼女自身も忘れているかもしれない。開いた痕跡はなかったから。私は意を決して、そのメモを開く。
118、121、126の文字と帝国と王国と公国。後は人の名前だけ。一瞬見ただけでは意味が分からなかったけれど。その人の名前は全部見覚えがある。……もしかして彼女は数字に関連付けて人の名前を並べた? では数字の意味は? ……そこで背筋が凍った。
年号。121年は今。あの子に最初尋ねられて答えた数字。118年はゼーレンが襲撃されたという年。では、126年……まだ来ていない、年が何故書いてあって人の名前まで振り分けられているのか。あの子は、神託で未来を知っている? もしくは、あの子自身が未来から飛ばされてきた……? 後者の可能性は、十分にあった。何故ならあんなところに、1人でいる理由がない、そして年を尋ねる理由も、ない……
見てはいけないものを見てしまった気がして、私は咄嗟にそのメモをベッドの下にしまう。
一階に下りながらあの子の立場を考えた。
……だから、あんな誤魔化し方しかできなかった……これが一番しっくりくる答え。あの子がどんな形でも保護して欲しいと思った理由は戻る場所が本当になかったから……こんなことをそのまま伝えて私が信じたかと言われると……おそらく、あの子の性格も加味して信じない。だから……あの子は、誠実だった。なら、私がするべきことは。
キッチンで水筒にお茶を注ぎ、家を出る。そして駆け足で見張り小屋へと移動する。水筒ぐらいの話であの子が完全に納得してくれるとは思えない。だけれど疑う理由もないはず。
見張り小屋の扉に手を置く。この小屋の扉を開けて、あの子と再び顔を合わせるのは怖い。だけど。いつも通りのお姉さんでいよう。そう思って、扉を開けた。
「お待たせ、ミコちゃん。見回り、戻りましょうか。」