お嬢様と拾われた私
身寄りのない私を有名な貴族様が、引き取ってくださった。生まれたばかりの貴族様の子の助けになるようにということだった。
孤児の何人もいる子たちの中から私を選んだのは、年端がまだ行っていなくて、純粋そうで落ち着きのある女の子だったかららしい。
まだ4歳の私は、初めて馬車に乗り、初めて見る大きなお屋敷の門をくぐり迎えられた。貴族様に手を引かれて連れて行かれた小さな赤ちゃんの眠る部屋のことをはっきりと覚えている。
可愛らしく私の指を握って離さない。彼女をずっと眺めていた。
私は彼女のためにあると、幼いながらその時にはもう貴族様の思いに忖度することをわきまえていた。
そしてお嬢様の小さなお側係であり、学業の友として、私も貴族様に養っていただけることになった。
初めてお屋敷に来てから、少し大きくなったころただのお側係では足りないと思うようになった。お嬢様を守れるようにと進言して貴族様に、剣術武術も習得させていただいた。
邪魔な髪は短く切った。体を鍛えると身長も伸びた、筋肉もついてきた、ただ生傷は絶えなかった。
私には、可愛らしさなんて最初からなかった。だからいいやと別に気にならなかった。ただこの可愛らしい宝物を一生懸命守ろうと行動しているだけだった。
時は経って引き取られてから18年後。今も変わらずお嬢様のお側係のまま。
「ルカ…、ルカ、ルカティアナ……」
私を呼ぶ声がして、近づこうとして足を止めた。
私は呼ばれたわけでは無かったようだ。うわ言のように何度も私の名前を呼ぶお嬢は、今も目を瞑ってベッドの上、眠りの中だった。
うなされているのではないかと心配する。
うなされているのではない。そうわかったのは、彼女が枕を抱きしめて心地良さそうに夢を見ているのようだったからだ。
その仕草に思わず顔を赤らめる。
お嬢様がその枕を抱きしめて、口付けのような仕草をして寝ているから。
立ち止まって、動けなくなった。かわいい寝顔で呼んだのが私の名前で……
「ルカ……」
もう一度呼ばれて
「ミリア……」
と呼び返してしまう。
ひた隠しにした気持ちを今すぐにうち明けてしまいたくなった。
胸が張り裂けそうになった。枕に触れている彼女の唇をしげしげと見つめる。それから目を強く瞑った。
「心の底からお慕いしています。ミリアお嬢様」
まだ、目を覚ますことのないお嬢様。そのベッドのそばで床に片膝をついて、ただ誰にも聞かれることのない愛を打ち明けた。ただそれだけで……
我慢しようとした、ただ聞こえることのない愛の告白で収めて部屋を出ようと思った。
立ち上がった私の目に枕を手放して、仰向けで無防備に両手を開けたお嬢様の姿があった。
吸い込まれた。ひた隠しで耐えすぎたのだ。その唇に気付けば吸い込まれていた。
口付けて離れるまで、自分を止めることができなかった。
気がついて、部屋を後にする。顔の熱が引いたらもう一度起こしにいこう。何食わぬ顔で。