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母ヤバ 第1話 息子と母 試し読み

 思春期男子の母親との距離感って、どんなものだろうか?

「ねえねえ、こーくん。高校生になって、どんな気持ち?」

 夕食の席で、母さんがニコニコしながら聞いて来る。

 いや、ちょっとニヤニヤしているかもしれない。

「どんな気持ちって、言われても……」

「ワクワクしちゃう?」

 母さんは頬杖を突きながら、なおも笑顔で聞いて来る。

「まあ、多少は……」

「だよね~、キラキラ輝く青春模様だものね~」

 母さんは、まさしく俺よりも目をキラキラと輝かせて言う。

「でも、母さん嬉しいわ」

「何が?」

「だって、高校生になったら、色々と胸キュンなイベントがあるでしょ? 可愛い息子から、色々とエピソードを聞いて潤わないと」

「やめてよ、人の話をマンガの題材にするのは」

 俺はため息交じりに言う。

 そう、俺こと白井 幸樹(しらい こうき)の母である白井 愛実(しらい まなみ)は、少女マンガ家なのだ。

 ちなみに、年齢は30代中頃。

 けれども、20代でも全然通用するくらい、若々しい見た目。

 ハッキリ言うと、美人でおまけに巨乳だ。

 母さんは、ゆるふわロングをいじりながら、まだニヤニヤとしている。

 顔が可愛い分、むしろムカついてしまう。

「こーくんは、クラスに誰か可愛い子はいた?」

「さあ、どうだろうね?」

「もう、ツレないんだから~」

 ツンツン、と手の甲をつつかれる。

「母さん、息子との距離感を間違えないでよ」

「良いじゃない、母子(おやこ)のスキンシップは、大切なんだから」

「だとしても、俺はもう高校生なんだから、ちょっとは気を遣ってよ」

 ため息交じりに言うと、母さんはふいにシュンとした顔になる。

「ごめんね、こーくん。私、こーくんの本当のお母さんじゃないから、心のどこかで焦っているのかもしれないわ」

「母さん……」

 そう、この母さんは、俺と血が繋がっていない。

 継母(ままはは)、義母なのである。

 俺の本当の母さんは、小学生の頃に病気で亡くなった。

 その後、父さんが愛実さんと再婚する訳だけど……

 今度は、俺が中学生の時に、父さんが交通事故で亡くなった。

 そして、現在。

 俺は義母の愛実さんと、2人暮らしをしているのだ。

「……まあ、その何ていうか」

 俺はポリポリ、と指先で頬をかく。

「母さんはもう、俺にとってちゃんと……母さんだから」

「こ、こーくん……」

 俺の目の前で、母さんがジワッと瞳を潤ませる。

「えっ、ちょっ、母さん?」

「うわ~ん! 息子の成長と気遣いが嬉しいよ~!」

「ちょっと、泣かないでよ! 良い歳した大人が!」

「心はいつまでも、17歳だもん!」

「何かの怪しい宗教ですか!?」


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