※状況描写をすべて省いたため、本編をご覧になっていない方は分からないと思われます。よろしければこちらを先にご覧ください!
『元ヒーローのおっさん(31歳無職)、再びヒーローになる』
https://kakuyomu.jp/works/16818093093578942806-------
リビングのソファに並んで座り、俺と新妻・ありさは、彼女のスマホ画面に映し出される写真を眺めている。
「これがお仕事中に麦茶を飲んでいる亨一さん、たまに緑茶バージョンもあるのがたまりません。こちらは渾身の1枚で、なんと桜吹雪の中ヘルメットを脱ぐ亨一さんですわ」
「そ、そうか、すごいな」
何がすごいって、この写真が全て盗撮であること、そしてクオリティが高いこと。誰が撮ったのか知るのは怖いので聞かないことにしよう。
「うふふ、過去10年分の亨一さんですわ、素敵でしょ?」
とありさは微笑む
さすが、10年の憧れを結婚へと昇華させた俺の奥さん。悪びれる様子が少しもないところが清々しい。
とはいえ、俺は常識人を自負するおっさんだ。愛する奥さんに、ちょっとお灸をすえておく必要があるな。
俺は彼女からスマホを取り上げると、カメラを起動し、肩を抱き寄せてツーショット写真を撮った。
その写真を見せながら彼女に言う。
「今度から、写真はふたりで撮ろうな?」
彼女は笑みを深くし、はーいと可愛い返事をして俺の腕にしがみついた。
春が来たら、桜吹雪の下で一緒に写真を撮ろう。おっさんひとりよりずっといい写真になるはずだから。
End