「店長〜、これ一体何の道具なんです?」そこにあるったのはミシンの様な形状だが、針ではなく三角系のトゲで先端が少し丸くなっているものだった。
「ほら、最近鍋の修理とかをうちにもってくる事増えたでしょ。鍬とか草刈り鎌とか、それこそ鍛冶屋に持ってきなさいよ。ウチは雑貨屋なんですからね」
プリプリと怒っていて、可愛いなとは思いつつ。ウチは弁当だの回復飴だの魔導具だの楽器だのは死ぬ程売れてますけど。雑貨がさっぱり売れてないのにずっと雑貨屋だって言い張ってるのよね。うちの店長。
「それで、この魔導具ですか? 一体今度はなにをやらかしたんです?」
「も〜、毎回やらかしてるみたいにいわないの!」
(毎回やらかしてるじゃないですか……)
「これはね、摩擦研磨攪拌機(まさつけんまかくはんき)って言うの」
「先端が三角の棒がくっついてるだけですよこれ」
「狙いをつけやすくする為に、この形状になりました」
「最近、こういう風にとれちゃった鎌を持ってこられるじゃないですか」
「錆びてますね」
「これをですね、魔導具を起動させて。この棒の先端の丸い所に下の台を使って固定してから押し当てます。後は縦と横についてるハンドルでこうぐるぐる〜とやれば……」
台の方が動いて、鎌がありえない位ピカピカに磨かれていく。
「これ、先端が高速で回ってますね」「そっ、摩擦を使って金属を磨けるの」「棒を変えれば、幅とかも自在って事ですか?」「そうよ」「でも店長の事だからこれだけじゃないんですよね?」
もうリアンナはこの店に来てから随分経つ、この店長は大抵こんなのつけてみましたとか言ってとんでもないものをつけてオマケが本体じゃんとなるまでがセットだ。
「ここの別のスイッチを押してから、この金属疲労でちぎれた所に押し当てるとですね。繋がるんですよ」
リアンナの目の前でさっきの研磨した時と同じ速度で、金属が完全に元通りに繋がったではないか。
(ほら、やっぱりぃぃぃぃぃ)
「店長、これ金属とか足してませんよね?」「溶かしてくっつけてるから、一般的には鍛冶屋で修理頼んだ時と変わらないわよ」「熱も無いのにどうやって……」「この棒が特殊でね、これを高速回転させる事で摩擦熱を産み。その摩擦熱で下の台の一部が温まって金属が流れ込んで、冷えて固まるって原理なのよ。研磨の時は、この棒に熱が発生しないようにする事で減らない研磨台としても使えるって事ね」「この棒もしかしてですけど」「アリさんの足です」「ほらやっぱり……」
「私が楽をする為には必要な事なのよ」真顔でそんなことをのたまう。
「こんなん、本職に見つかったら絶対台数作らされますよ」
「バレなきゃ大丈夫よ。と言うわけでさっさと残りの修理品片付けちゃいましょ」
「おう、シェリアちゃん! 昼のカツ丼弁当三十人前明日分たのまぁ!!」
遠慮なくドアを開けて入ってくる親方が、シェリアの手元の魔導具をガン見した。
「あっ……」「あっ……つんだ」
もちろん、人数分どころか。釜と同じくらい鍛冶屋のスタンダードにこれからなっていった。
※元ネタ:摩擦攪拌接合(これはわかりやすかったかも)
シェリアさんの魔導具が違うのは、研磨も出来る事と現実のそれは構造上金属の融点とか条件の関係で使われる場所がアルミ合金とかに多いのですが。その辺の汚れた鉄製品に使っても素人が使っても綺麗に仕上がる点など。そのあたりがご都合ファンタジーになっていますm(._.)m