別チームの同期、田所氏(仮名)がいきなりデスクにやってきて、ノンデリストレートパンチくれた。
「乃東、お前恋愛興味あるか?」
失礼な話である。これでも私は、日々「運命の人」という名の埋蔵金を探して、都会の荒野を彷徨っているのだ。私はキーボードを叩く手を止め、椅子を回して、最大限の笑顔を面に張り付かせた。
「……ない、と思われてるのが心外すぎて!あるに決まってる。なんなら半年前から『絶賛大募集中』の看板を心に掲げてるんだけど。その看板、見えてる?見えてないよね?じゃなきゃあのノンデリ発言はないな!見えてて言ったなら今ここで怒り狂って憤死(ふんし)しそう。」
と一気に言った。
すると田所は、私の勢いに吹き出してこう言った。
「ボニファティウス8世が転生した姿が乃東やな」
その瞬間、私の頭の中には世界史の資料集が召喚された。
ボニファティウス8世。1303年、フランス王との対立の末に捕らえられ、その屈辱に耐えきれず「憤死」したとされる教皇。
……ツッコミの語彙、世界史特化型。
「いや、乃東の恋愛事情には小指の先ほども興味ないんだけど実はさ」
と田所は笑いながら続ける。
いや、興味持てよ。
「今回、案件で恋愛系ジャンルの制作があって。俺みたいな心が枯れ果てた一人大好きマンが打ち合わせ行くより、憤死するほど恋愛に前のめりなお前が行ったほうがいいなと思って。頼めんか?」
なるほど、私は「恋愛に前のめりの専門家」としてスカウトされたわけだ。
ありがとう!行ってくるわ。
なんかのネタになるかもしれないし。
恋愛小説の参考にできると期待して。