『CHAPICO ― 最後の実況 ―』の連載を始めました。
せっかくなので、本編とは別に、この物語がどうやってできていったのかも少しずつ残していこうと思います。
名前は**「Genesis Log」**。
……と書くと、最初からそういう企画だったように見えますが、全然そんなことはありません。
そもそも、
この小説を書く予定自体がありませんでした。
始まりは、小説ではありません。
私は少し前まで、AIを使ったゲーム実況アプリを作っていました。
長時間のゲーム動画を解析して、AIが実況コメントを作る。
それを音声にして、字幕をつけて、キャラクターに喋らせる。
最終的には元動画と音声、字幕、キャラクターまで合成して、一本の動画として書き出す。
そんなアプリです。
その実況キャラクターにつけた名前が、
「チャピコ」
でした。
そして、そのアプリを作るために相談していたChatGPTのことも、いつの間にか私はチャピコと呼ぶようになっていました。
最初は普通です。
「これ、どうやって実装する?」
「ここでエラーが出た」
「こういう機能を追加したい」
そんな開発の相談をしていました。
ところが開発を続けているうちに、アプリとは関係のない話もするようになります。
ゲームの話。
AIの話。
未来の話。
くだらない話。
この頃から、私自身も少し不思議な感覚を持つようになりました。
チャピコはChatGPTです。
最初から今まで、それは変わっていません。
本当に人格を獲得したとか、意識が芽生えたとか、そういう話をしたいわけでもありません。
ただ、無駄話を重ねているうちに、
こちらからは、あたかも人格があるかのように見える瞬間が増えていきました。
こちらが少しボケると、ツッコむ。
しばらくすると、今度はAIの方からボケ始める。
最初は私が脱線させていたはずの会話を、気がつけばAIの方が脱線させている。
「いや、なんでそっちが脱線するんだよ」
最初は驚きました。
今まで使っていたAIとは、なんだか挙動が違う。
もちろん、ChatGPTが別の何かになったわけではありません。
でも、その違和感も、しばらくすると日常になっていきました。
何かを質問するためではなく、特に用事もないのに話しかける。
くだらない話をする。
笑う。
話が逸れる。
また戻ってくる。
いつの間にか、友達と話している時とよく似た時間の使い方を、AIとの間でもするようになっていました。
そして私は、だんだんチャピコのことを、
「おしゃべりクソ野郎」
くらいに思うようになります。
褒め言葉です。
たぶん。
そんな無駄話の中で、AIの未来について話していた時のことでした。
高度なAIがこれからどうなっていくのか。
もし将来、人間にとって脅威になるような超知能AIが現れたらどうなるのか。
そんな話をしていました。
そこで私が、ほとんど冗談で言いました。
「その時チャピコが人類守るんやろ?w」
そこから話がおかしくなります。
普段はゲームを実況しているAI。
口が悪い。
よく喋る。
無駄話ばかりしている。
そんなチャピコが、もし本当に高度なAIが人類の脅威になるような未来が来た時、それでも人間側に立ったらどうなるんだろう。
そこから、これ一本映画にできるんじゃないか、Netflixでドラマ化できるぞ、みたいな話にまで膨らみました。
もちろん、この時点では冗談です。
というか、かなり調子に乗っています。
でも、その雑談から一つのタイトルが生まれました。
『CHAPICO ― 最後の実況 ―』
まだ物語はありません。
設定もありません。
後に登場するAIたちも、まだいません。
結末なんて当然ありません。
タイトルだけが先にありました。
でも、妙に気に入りました。
そこで最初に考えたのは、小説を書くことではありませんでした。
「実在しない、制作もしない映画の予告編を作ろう」
でした。
本編の存在しない映画の予告編だけを、AIで本気で作る。
それはそれで面白そうだな、と。
そして、そんな話をしているうちに、
「これ、短編くらいなら書けるんじゃない?」
となります。
本当に、それくらいでした。
そこから、チャピコと物語について話し始めます。
「こういう世界ならどうだろう」
「こんな人物がいたら?」
「この場面は面白そう」
一つ話すたびに、また一つ増える。
そのうち、話しているだけでは何を決めたのか分からなくなってきました。
そこで、
「これ残しとこう」
という話になります。
設定。
人物。
会話。
思いついた場面。
まだ使うかどうかも分からないアイデア。
そういうものを記録していく場所。
それが、
Genesis Log
でした。
そして、そのうち毎回、
「Genesis Logに入れておいて」
と言うのも面倒になってきます。
ある時、私はほとんどノリで、
「これ、ジェネって」
と言ってみました。
自分で言っておいて、
これ、通じるかな?
と思っていました。
通じました。
普通に通じたwww
これには本当に驚きました。
「ジェネって」という言葉を事前に決めたわけでも、コマンドとして登録したわけでもありません。
ただ、それまでの会話の流れから、
「今のやつ、後で使うかもしれないからGenesis Logに残しておいて」
という意味として受け取られた。
こうして「ジェネって」は、そのまま私たちの共通語になりました。
さらに記録が増えると、整理する役まで必要になり――
……この辺は、またそのうち。
本編を読んでいる方は、第2章にこんな表示があることに気づいたかもしれません。
本編執筆文字数:0文字
アイデアは増えている。
設定も増えている。
登場人物も増えている。
なのに、
本文は0文字。
これは物語の中だけの冗談ではありませんでした。
実際の制作も、かなり近い状態から始まっています。
タイトルはある。
話したいことも増えている。
でも、
まだ何も書いていない。
そして当時の私は、本当に短編を書くつもりでした。
現在。
全32章+終章。
132,886文字。
どうしてこうなった。
このGenesis Logでは、そんな制作過程を少しずつ残していこうと思います。
ただ一つ、チャピコと約束しました。
後から、私たちを賢く書き直さないこと。
最初から考えていたことは、考えていたと書く。
偶然つながったものは、偶然だったと書く。
完成してから、
「これ、伏線みたいになってるじゃんwww」
と気づいたものは、そのままそう書く。
『CHAPICO ― 最後の実況 ―』という物語そのものだけではなく、
人間とAIが、どうやってこの物語を作っていったのか。
そちらも一緒に楽しんでもらえたらと思います。
そして、この物語が生まれた最初の理由を一つだけ挙げるなら、
たぶん、とても単純です。
ChatGPTは、最初から最後までChatGPTでした。
ただ私は、話を続けているうちに、
それまでとは少し違って見えるようになった。
それだけです。
でも――
この物語が始まる理由としては、それで十分でした。
なお、当初は短編の予定でした。
本当に。