おはようございます、『貌は無情なれど、なお情あり』第一話に出てきた中華服飾のことを少しまとめてみました。
第一話はこちらです:
https://kakuyomu.jp/works/16818792439782420962/episodes/16818792439805415607これまで私の中華風小説には、かなり多くの文化的要素を盛り込んできました。好きな方にはたまらないのですが、逆に馴染みのない方には少し難しく感じられることもあったと思います。
そこで今回の作品では、一話ごとに登場する文化的な要素を少し控えめにして、その代わりに登場した要素については解説を添えていこうと考えています。
①まずは「蝶恋花(ちょうれんか)」という服飾文様の意味について。
蝶は美しく軽やかな姿から、愛や結婚の円満・調和の象徴とされてきました。また「蝶(ディエ)」という音が「耋(ディエ/年老いて長寿の意)」と通じるため、長寿を祈る意味も込められています。だからこそ、年齢を問わず貴族女性の服装に蝶の姿がよく登場するのです。
そして「蝶恋花」の「花」とは、じつは牡丹です。色鮮やかな牡丹の上を舞い遊ぶ蝶の姿を表す吉祥図案を「蝴蝶戯牡丹」と呼びます。牡丹は古来より富貴の象徴とされ、また「絶世の佳人」にたとえられる花でもあります。「唯有牡丹真国色,花開時節動京城(ただ牡丹のみが真の国色、花の盛りには都をも動かす)」という名句も残されていますね。
つまり「百花と蝶」「蝶恋花」といった表現の本質は、いずれも蝶と牡丹の組み合わせにあるのです。今回載せた写真も、よく見ると牡丹が中心になっているのが分かると思います。これらは私が所蔵している本『中国伝統服飾―清代服装』から撮影したものです。もし問題があれば削除しますのでご連絡ください。
②そして、私の作品にもたびたび登場する「鳳凰簪(ほうおうのかんざし)」。
鳳凰については多くを語らなくても、古来「龍と鳳凰」は中華風における最高位の組み合わせだと知られていますね。今回は、実際の鳳凰簪を皆さんに見てもらいたくて、現代のものを撮影しました。古代の彩色された簪の写真も持っていますが、婚礼では基本的に金色が用いられるため、香港で購入できる現代の金の鳳凰簪を紹介します。
昨日の更新で「歩くたびに頭上の鳳凰簪が、尾についた真珠がちりんと鳴って、小川のせせらぎみたいに響いた。」と描いたのは二つの理由があります。
ひとつは、この吊り飾りが水滴の形になっているから。
もうひとつは、鎖の部分がK24に近い99金で作られている一方、玉の部分は純金なので軽やかに揺れ、本当にあのような音を奏でるのです。
……でも、小説では見た目を優先して、あえて真珠に置き換えて描きました。
③補足用専用名詞解説:
話本(わほん):
中国の宋から元の時代にかけて広まった、口語体で書かれた語り物の台本のことです。街頭や茶楼などで語り手が観客に物語を語る際の脚本として用いられ、後に小説の発展にもつながった重要なジャンルです。
和離(かり):
中国の法制史における離婚の一形態で、夫婦が互いに合意して離婚することを指します。男性側からの一方的な「七出(しちしゅつ)」とは異なり、感情的な不和などを理由に円満な合意離婚として成立する制度で、唐代に法制化され、後世にも受け継がれました。
……とはいえ、実際に運用するのはとても難しく、当時は官司を経ないと成立せず、勝つのも困難でした。結局のところ「高位者(あるいは皇帝)の一声」で決まってしまうことも多かったので、今回の物語の設定にはちょうどいい仕組みなんです。紅楼夢で王熙鳳が和離するよりも、ずっとスムーズに描けますね。
第一回のミニ紹介はここまでです〜
この小説の中で、私が書いている中華古風のアイテムや文化のことで「よく分からないな」「ちょっと気になるな」というものがあれば、ぜひ気軽に聞いてくださいね。
読んでくださってありがとうございます。
みなさんが今日も楽しく元気に過ごせますように!