混沌の中で咲く花々
登場人物設定
千里(ちり)
主人公。混沌峰高校に通う『高校二年の女子』。誰もが見惚れる美少女ではあるが、本人にその自覚なし。マンガ、アニメ、ゲームを嗜んでおり、特にゲームが好き。困った人を見過ごすことができないお人好しで前述の美貌も相まって老若男女問わずモテているものの、本人は気付いていない。
亮(りょう)
主人公千里の幼馴染にして同じ高校に通う男子高校生。攻略対象キャラの一人。主人公の理解者であり、親友であり、恋愛感情は持っていないものの独占欲を持っている人物。行動力があり、そのための努力を苦にせず行う強靭的な精神力を持つ。
・亮ルート
主人公に対して大切な幼馴染と認識しているものの、ある日とある理由で特殊部隊が襲い掛かってくる事件で、危険な目に遭った主人公を見て失うことへの恐怖を抱き、その結果独占欲が深まり、主人公のことを異性として見るようになった。しかし幼馴染としての関係も壊したくない彼は主人公に対する思いに葛藤し、心に負荷がかかり始める。そんな彼を心配するのは当然彼の幼馴染であり――。
ミカエル
主人公が通う高校に海外から留学してきた高校二年生の男。攻略対象キャラの一人。実家の方針で日本の学校へと留学した経緯があり、当初やや義務感で登校していたものの、放課後の音楽室で一人歌を口ずさむ主人公と出会って一目惚れをする。それ以来主人公に対し日々好意を口にするものの、ぞんざいな扱いを受ける。容姿端麗、成績優秀なため、女子生徒から人気。
・ミカエルルート
留学の期限も近付き、更には帰国した先には実家が用意した婚約者と結婚することとなるミカエル。しかしそれでも欲しいのはただ一人の心であり、未だに自身の恋を諦めきれないミカエルは葛藤する。だがそれで主人公の気持ちを無視するわけにはいかず、最終的に主人公の幸せを望み、恋心をそのまま抱えて帰国する決意をする。しかしそんな苦しそうな表情を見た主人公は――。
龍一
亮の兄にして自分で起業した会社の社長。攻略対象キャラの一人。亮の兄ということで彼もまた主人公の幼馴染であり、主人公にしてみれば尊敬すべき兄のような人。龍一もまた主人公の事を可愛い妹だと思っており、尊敬される兄として努力している。
・龍一ルート
幼馴染というより兄妹のような関係性を築いていた二人にとって、互いに恋愛対象として見れない関係になっていた。いつまで経っても守るべき妹のような主人公だがしかし、主人公がふと見せた異性としての姿に鼓動が早くなる自分がいた。小さい頃からの付き合いだった主人公が気付けば、大人として成長している姿を見て、妹姿の主人公が薄れていく日々に戸惑いを見せる。しかし変化しているのは主人公も同じで、心のどこかで兄だと思っていた彼に好意を抱くようになる。すれ違い、葛藤する二人の行く末は――。
センリ
主人公が行く先々で遭遇する自分によく似た謎の男の子。隠し攻略対象キャラ。主人公が一人の時によく出会う存在であり、ゲームが好きという共通点から話がよく合う。主人公が悩んでいる際にまるで道標のように助言を授けてくれており、いつしか主人公は彼の事を信頼し、信用するようになる。だけどそんな彼には世界を揺るがすほどの秘密が隠されており――?
・センリルート
鏡写しのように存在する並行世界のもう一人の千里。しかしどの並行世界も千里は男であり女ではない。ただこの世界の主人公だけが女であり、他の並行世界の自分とは違って女の千里には欠けているものがあった。それはどの世界の千里にも持っている『十年前に起きた世界分裂現象の時の記憶』を主人公だけが保持しておらず、主人公ただ一人だけが自らの行動によって世界を枝分かれさせる特異点体質を持っていた。センリはそんな主人公を監視するためにやってきた異世界千里連合の一人でありこの世界の本当の千里であった――。
みるぷー
魔法の国の命令によってやってきたマスコット。個別ルートあり。主人公にしか見えないネズミ型の妖精であり口癖は「アハッ! やぁみるぷーお姉さんだよ!」。刹那的快楽主義者ではあるものの、気に入った存在を大切にする精神は持ち合わせており、自身によって怪獣と戦わなければならない宿命を背負った主人公に負い目を少しだけ感じている面もある。
・みるぷールート
怪獣はこれまで主人公が選択肢、枝分かれした世界線の積み重ねによって起きた歪みであり、怪獣の正体はそんな歪んだ末に怪獣化した主人公の成れの果てであった。この戦いはある意味自分同士との戦いであり、戦いに勝利していけば行くほど並行世界の自分は消え、主人公自身の存在強度が上がって至高の一人となる。
これは魔法の国の女王が計画したものであり、やがて至高の一人となった主人公が世界を統べる神にさせるのが彼女の目的だった。しかし一人の女子高生として生活して欲しいと願うみるぷーは、神となる主人公を救うために決死の行動をし始め――。
混沌ウサギ
主人公を異世界へと誘う白と黒のまだら模様のウサギ。個別ルートあり。主人公のことが大好きな変態ウサギであり、主人公のファン。また主人公の使い魔として契約してあるため、その実力は非常に高い。隙あらば主人公にセクハラしようとする害獣ではるが、本人的にはあくまで口頭によるセクハラなのでセーフと考えている。
・混沌ウサギルート
実は主人公とは前世での友人であり、普通の人間だった。一国の姫である主人公とは貴族の交流会で友人となっていた。しかし主人公には女王として君臨する母親が存在しており、女王は自身の娘にセクハラしまくる混沌ウサギを嫌って二人の仲を引き裂こうとした。それによって二人はすれ違い、最終的に和解したのは互いの死に際だった。主人公は別世界に転生し、自分はウサギに転生したものの、混沌ウサギは転生してもなお主人公の事を覚えていた。だが事故とはいえ、前世の悲劇を起こしてしまった罪悪感を抱えており、主人公に近付かないと誓っていた。そんなある日異世界に行っていたとあるマスコットの魔法によってこの世界に飛ばされた主人公を見つけてつい近付いてしまう。果たして前世から続く二人の行く末は――?
◇亮ルート エピローグ抜粋
ある日の休日の昼下がり。
ボクのスマホに亮からの電話がかかってくる。
「もしもし?」
「おーっす千里! 今暇か?」
家が隣同士の幼馴染だったからか、ボクと亮の間には気安い親友関係として日々を過ごしていた。
でもあの日のことがあって、ボクと亮はこうして恋人関係になった。それがどこかくすぐったくて、セリフは今まで通りのやり取りなのに不思議と声が弾む。
「その、さ。今度二人で遊びに行こうぜ」
「! う、うん! いいよ!」
恋人になっても、これまで幼馴染として過ごしてきた日々は変わらない。ボクたちの関係が変わることに葛藤していた亮にボクはそんなことを言った。でも恋人になったらなったで、言葉の受け取り方が変わったと感じてしまう。
その事実が、新鮮で心地いい。
「それじゃあ今週の日曜で!」
「――うん、わかった!」
いつも通りのお出かけなのに、いつも通りじゃない。今週の日曜、ボクたちは初めて、恋人としてデートをするんだ。
日曜日当日の朝。
待ち合わせ場所でボクは人を待っていた。
ファッションに詳しい妹の助けもあって、ボクでも今回はバッチリ決まったと確信している姿だ。これを今日亮に見せるという事実に心が落ち着かない。
「まだ、かな」
いや亮がまだ来てないのはボクのせいだ。逸るように待ち合わせ場所に来た時の時間は待ち合わせの時間より大分早い。亮が来ないのも無理はなかった。
「早く来すぎちゃったな……」
そう言って、ふと横を見る。
すると亮が呆然とした表情でこっちを見ていることに気付いた。
「きゃぁ!!?」
「あ、悪ぃ!」
瞬きもせず、ただ無言でこっちを見ていたのは流石に恋人補正抜きでもびっくりする。そんな驚きように亮は慌ててこっちにやってきて申し訳なさそうにする。
「い、いつからそこにいたの!?」
「いやぁ……千里が家から出たところだな」
「最初じゃん!? なんで呼ばないの!?」
「ドッキリしようかなって……」
ポリポリと頭をかく亮にボクは渾身の力を込めて彼の胸をポコポコと叩く。残念かな、ボクの行為はただ彼を喜ばせるだけだった。
すると。
「――……いや、実は見惚れてて声を掛けれなかったんだ」
「……え」
「ずっと毎日見てきたのに、家から出てきた千里がまるで別人のようになっててさ……さっきから声を出すのに心臓の鼓動が邪魔をして上手く喋れる自信がないんだよ」
「あ、う……」
ボクは初めて、耳まで赤くして喋る幼馴染の顔を見た。それは彼がボクを別人のように見間違えたと言うように、ボクもまた幼馴染が僕の知る幼馴染とは違う人のように見えた。
いや違う。
ボクの目の前にいるのは幼馴染としての亮じゃない。
――恋人としての亮なんだ。
そう自覚すると、ボクまでもが声を失う。
そんなボクに、亮はそっと手を握った。
「行こうぜ、千里」
「……うん」
ボクの隣にはいつも通り幼馴染がいる。
でもこのいつも通りの距離感は、記憶よりかなり近い。
「……好きだぜ、千里」
その言葉にボクは見開き――。
「ボクも好きだよ!」
――隣にいる彼に微笑んだ。