●黒崎勇吾の生存フラグについて
この真実を知る者はいない。
速水学人は知らず、赤翼ソラも知らず……黒崎勇吾も知らない。
前の世界でアニメを見ていた天川ツルギでさえ、この真実に気づく事はない。
ツルギが速水を探して地下ファイト施設へと急行したあの日。
本人が語った通り黒崎勇吾はツルギ達を目撃していたが、疲労とキャパシティオーバーによりその場を去ってしまっていた。
だがもしも……もしもこの時、勇吾がサボらずにツルギについて行っていたら?
ツルギと速水(感染)が戦う、あの会場に行ってしまっていたら?
速水感染事件そのものは無事に解決しただろう。
だがその後は……黒崎勇吾はどうしただろうか?
他の地下ファイト施設とは比べ物にならない規模の会場。そして裏社会に身を置く、気絶した人間達。
当然その中には『財団』に関わる人間もいただろう。
自身にとって最大の因縁であり目的でもある『財団』に大きく近づける可能性。
黒崎勇吾が欲を出してしまう展開は想像に難く無い。
もしもあの時、ツルギが速水を探しに地下ファイト施設へ突入するという選択をしていなければ。
黒崎勇吾がサボる理由を、ツルギが無意識に作っていなければ。
……一人で調査に乗り出した黒崎勇吾はその動きや動機が、『財団』と政誠司に全て伝わってしまっただろう。
そうなれば黒崎勇吾は命を狙われ、『財団』の差し向けた使者と戦う事になる。
そして黒崎勇吾は人知れず殺害されてしまい、ツルギの言う「原作通りに忽然と退場していた」という状態になっていた。
しかしこの真実知る者は誰もいない。
特に当事者達は決して、知る事がないのだ。