カクヨムコン、ついに区切りですね。
そんな中、新作を構想しています!
固まってきたので、試しに書き出しをしたためております……
雰囲気としては、これもまた異質な、
『和風伝奇×ゴシックホラー』というチャレンジ!
何なんだよそれはッ!
もうちょいまとまったら、開幕に……
以下、冒頭を公開してみます!
白花ノ剣を読まれた方は、『妙な既視感』を覚えると思います。
白ノ宮に配属された、若き兵の理久(りく)は、巫女の未命(みめい)と出会う。
未命は魂の渇望に突き動かされ、血と霊気を求める……
理久は未命のために、『少女が求めるもの』を捧げてゆく……
禁断の逢引きの中で、不穏な事件が起き始める。
蒼い霊。抑えられぬ渇望。そして『かずら』とは……。
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白花蒼霊譚
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火の粉を飛ばして爆ぜる松明を左手に、白木の鎧をまとった、黒髪の若い兵が順路を進む。
暗い星空を見れば、上弦の月に雲がかかる。
若い兵――理久はまだ慣れぬ境内の見廻りに、辟易としていた。
白ノ宮――と云えば白木の建築が立ち並ぶ神域だが、夜ともなれば現実離れした異界に等しい。
木の匂いに紛れ湿った夜気が漂っている。初夏というのに肌寒い気がする。
松明の火に照る、不気味な白壁の迷路を進んでゆくと、やがてある建物の近くまできた。
そこに見えたのは、小さな白い背中だった。
建物の入り口の方に松明がかかり、灯りが届いてはいるのだが、その姿は白い影としか見えない。
理久は息を呑んで、足を止めて目を見張る。
よく見ると白い背中は、巫女のようだ。――寝巻きの白い着物に、髪を背中に垂らしている。
ききっ……
と微かな声。鼠かなにかのような。
巫女――その少女は理久に背を向けたまま、気付かぬように、肩を震わせていた。
ききいっ……
いささか苦しげな、鋭い声。はあはあ、と少女の息遣いが聞こえる。
理久は心臓の鼓動を感じながら、思わず足をよろめかせる。――そこで小石を踏んだらしく、きしり、と音を立てた。
すると、少女の肩が跳ねるように動いた。
「あ……」
と小さな声。理久は仕事柄、松明を突き出して、恐る恐る近づいていった。抑えた声で、
「な、何をしているんだ……。お前は」
少女は立ち上がると、気まずそうに俯いた。
「ち、違う……。これはっ……」
少女の視線は、ちらちらと、背後の翳に向けられていた。理久はさらに近づいて、その翳を火で照らした。
そこに見えたのは、鼠だった。灰色の大きな鼠は、前脚を揃えて横たわり、ぴくぴくと震えていた。
口から血を流し、ぐったりとしていた。理久は振り向いて少女を見た。――すると、少女の手に血がついていた。白い寝巻きの手元にも。
おまけに、少女の唇にも血が滴っていた。「おい、お前、いったい……」と、理久は目を拡げ、まじまじと少女の目を覗くだが、少女の目の底から、蒼い光が灯るように見えた。
ぞくり、と寒くなるものがあって、理久はたじろいで、後ろに退がった。少女の寝巻き両胸に、花の紋様――白花紋の銀刺繍が見えた。
少女は寝所の方へと急に駆け出した。
「ま、待てよ!」
と呼びかけるときには、少女はもう闇の中に消えていた。
(何なんだ、あれは。幽霊だのじゃなさそうだけど……。なぜ、鼠を。――喰ってたのか? いや……血?)
◇
寝所の前――雛蘇ノ宮の手前までくると、未命は思わず崩れ落ちるように座り込んだ。
闇の中で、血にぬるつく手を感じながら、苦しげに呟く。
「止めろ。止めろ! 魔物め。なぜ? なぜわたしを飢えさせるの? 何で……」
その声に応える者はいない。
未命が魔物と出会ったのは、二ヶ月ほど前のこと。霊受の儀式のときに、神と繋がるどころか、よりによってあの、魔物らしきものと繋がってしまった。
そいつは遠い闇の中で、蒼い目を光らせて、低い女の声で囁いてきたのだ。
「早う目覚めよ。《かずら》が来る。かずらが……。ゆえに、未命よ…………」
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白花ノ剣より後の時代。緩く連なるこの、新たな『欲望』の物語、どうなるでしょうか。。
五年ほど後の時代でして、ある程度、白花ノ剣の面々を出させていただきます!
いくつか白花ワールドの構想があるので、別のから書く可能性が浮上したらスミマセン!