Oの通夜で再会した男と飲んだ。
その彼とは古くからの顔見知りだが、一緒に食事したりするほどの仲ではなかった。
通夜で再会したのも二十年前に街で偶然顔を合わせて以来だ。
これもきっとOが引き会わせてくれた何かの縁だろう。
彼はOが最も仲良くしていた友人の一人。
最後の入院中にも何度か見舞い、その時Oがこんなことを言っていたらしい。
「なんかな、昔のことよく思い出すねん。インドもな」
ポツポツと思い出話を語っていたという。
Oから聞いた体験話を彼に読んでもらった。
「インドの話もこの通り。他のも全部本当の話やったんですね。僕もOから聞いたことがあります」
この彼がOのインド仙人修行に同行した男だ。
第22話「生きろ」。
ガンジス川で溺れた時に、Oが薄れいく意識の中で聞いたという「生きろ!」と叫んだ謎の男の声。
Oはその声の主に心当たりがないと語っていたが、今やっと気づいたんじゃないかな。
あの時のあの声は、未来の自分だったということに。
混濁する意識の中、Oは過去の記憶の世界をさまよい、若き頃の自分の危機を救ったのだと思う。
飲めるものなら飲んでみろとテーブルに献杯のグラスビールを置いたが、Oが口をつけた形跡はなかった。
そうか、ハイボールの方が良かったのか?
いや、でも。
Oは僕たち二人の隣に座り、あの人懐っこい顔でニコニコしていたと僕は思っている。