<剣風>
「こっちが剣風。騎士系に竜騎士系を加えたダブル。竜撃砲槍というマルチプル兵器を装備し、竜王を従えた正真正銘の竜騎士だ」
ビシッ!
竜兜に手を当て敬礼する剣風。
そびえ立つ一本の大樹のごとき安定感。
派手さは無いが騎士系らしい真面目な雰囲気を醸し出す。
「むむっ! 騎士系……、凄い」
なぜか雪姫が感銘を受けていた。
目を真ん丸に見開いて、剣風の姿に見入る。
「雪姫は騎士系が好きなのか?
「ん。騎士系を従属させているとポイントが高い」
「何のポイントだ?」
「『打ち手』の合格基準」
「え? そんなのあったの?」
ちょっと興味があったが、今は仲間の紹介の方を優先。
<剣雷>
「こっちが剣雷。剣風と同期だ。騎士系に破騎士系を加えたダブル。雷双大剣を振り回す双剣使いにして、発掘品の巨大バイクを乗り回す破天荒騎士だな」
ビシッ グッ!
騎士らしい敬礼の後、雪姫へと振り向き、
お道化た様子で右手の親指を立ててサムズアップ。
剣風とは違い、騎士系ではあれど、少々軽薄な雰囲気が持ち味の剣雷。
カラッとした小気味良いアクションと豪快な勢いが特徴。
「剣風と大分性格が違う」
「そうなんだよなあ……、なんか知らんがいつの間にかこうなった」
全くの同時期に仲間になった同機種同仕様の2機。
特に差をつけたつもりはないが、そうとしか言いようがない。
あえて差があったと言えば、剣風は初期スキルに『行軍(中級)』『文学(下級)』を持っていて、剣雷は『投擲(中級)』『探索(下級)』を持っていた程度。
そして、剣風には『竜鎧砲』を、剣雷には『電磁投射剣』を与えたことくらいだろうか。
まあ、それぞれ個性が出てきたのは、成長の証とも言える。
性格の違う2機だけに、互いに足りない部分を補い合い、精進してくれるだろう。
<胡狛>
「この子は胡狛。罠師系に整備士系、工作員系、鍛冶師系を加えたクアドラプルだ。チームの罠・整備関係と裏方を取り仕切る裏ボスだ。怒ると怖いぞ。皆が震え上がるくらいに、だ。雪姫も怒らせないように注意しろよ」
「マスター……、か弱い婦女子をそんな風に紹介するのはどうかと思いますよ」
俺の紹介が気に入らないのか、拗ねたような素振りを見せる胡狛。
ムッとした表情を浮かべてジト目で睨んでくる。
しかし、すぐにパッと表情を戻し、雪姫へと向き直り、
ニッコリ笑顔を浮かべて自己紹介。
「先ほど、マスターから少々不本意な紹介を受けました胡狛です。罠・整備関係を取り仕切っているのは事実ですが、裏方は森羅さん、辰沙さんと共同で管理させていただいております。あと……、私、滅多なことでは怒ったりしませんし、とっても優しいお姉さんです! ここ重要ですから! …………だから、ご安心くださいね、雪姫さん」
「ん……、分かった。胡狛は滅多なことでは怒らない優しいお姉さん。覚えた」
「良い方ですね、雪姫さんは……、チームで分からないことがあったら、何でも『私に!』聞いていください。女の子同士、仲良くしましょう!」
「ん、よろしく」
雪姫の天然な反応にも関わらず、半ば強引に仲良くなろうとする胡狛。
何も知らなければ親切お姉さんに見えないこともないが、いつもの胡狛を知る者からすれば、どこか裏を感じてしまう言動。
これも胡狛の普段の行いの結果であろう。
案の定、毘蜀が苦い顔(あくまで雰囲気)でその光景を見つめていた。
<輝煉>
「コイツは輝煉。今は機械種オウキリンの姿だが、その正体は全長100m超の超重量級、機械種コウリュウ。豪魔と並んでパーティーの盾であり、チームのご意見番だ」
「キラキラ……、綺麗」
ブルルッ!
雪姫の素直な感想に、輝煉が小さく嘶く。
ほんの少し頭を下げた仕草を見せ、
雪姫を快く受け入れることを表明。
「この子、大きくなる?」
「ああ、今は特級スキルの『回帰』を使用して、ランクアップ前の機体になっているんだ」
「特級スキル………」
「珍しいだろ。手に入れられたのは偶然だけどな」
まあ、厳密に言うと偶然ではなく、征海連合の策の一環。
それも偶然と一言でまとめてしまうとそうなのだけど。
<刃兼>
「刃兼だ。女侍系に侍系を加えたダブル。緋王の部材を取り込んで現象制御持ちとなった。街ではその剣技を以って護衛役をこなし、敵は空間斬でバッタバッタと薙ぎ払ってくれるぞ」
「むう……、それは強そう」
俺が刃兼を紹介すると、雪姫は気に入った様子でウンウン頷く。
そんな雪姫を前に刃兼はその場にそっと跪き、首を垂れながら最上位の礼を取る。
「奥方様、お見知りおきを。お館様にお仕えする刃兼でございます」
雪姫へと恭しい態度で挨拶する刃兼。
その姿は時代劇の1シーンかと思うほどに美しい。
普段から礼儀正しく、日常では控えめな性格の刃兼だから雪姫との相性は悪くないはず。
しかし、雪姫を『俺の奥方』扱いするとはどういうことか?
恋人関係にはなりたいと思うけど、いきなりの結婚は気が早すぎる。
最終的には考えないこともないが、結婚と言われると、どうしても気後れしてしまうのは避けられない。
「刃兼。雪姫は俺の奥さんじゃないぞ」
「そう。ヒロと私はパートナー。婚姻よりもずっと深い関係」
「おい! 雪姫……」
「間違ってない」
「いや、誤解されるからな……」
「誤解も何も、ヒロと私は(宝貝と持ち主として)繋がっている」
「コ、コラッ! さらに誤解されるようなことを言うんじゃない!」
「むう………、繋がっているのは事実。ほら、ヒロも感じているはず。魂と魂の結びつきを……、古の大道が作りし絆を……」
「オカルトチックに言うな! 余計に怪しくなる!」
言い合う俺と雪姫を前に、
刃兼はずっと困った顔で立ち尽くしていた。
<辰沙>
「辰沙だ。竜メイド系と狂戦士系のダブル。屋内のことを取り仕切るメイド長でもある。生活関連のことは辰沙に相談してくれ」
「ご紹介に預かりました辰沙です、ドラ」
スカートの両端を軽く抓んでお辞儀をする辰沙。
それだけで周りが華やぐ気品に満ち溢れる。
性格は控えめながら、チャイナ風メイド服に包まれた肢体はダイナミック。
メイドの慎ましやかさと、艶やかな女性の魅力が並列して存在。
「む………、メイド。ソレに大きい………」
辰沙の挨拶に、雪姫は1点を見つめてポツリと感想を呟く。
自分には無く、相手にはあるモノを実感しているかのように。
そして、チラッと俺の方へと視線を向けて口を開き、
僅かに固い口調で俺へと問いかけてくる。
「ヒロは大きいのが好き? 男の人はメイドを好みの容姿で揃えると聞く」
「いやいやいや! 辰沙達は買ったんじゃなくて、白の遺跡で見つけたんだ! 偶然だよ! 偶然! 本当! 本当!」
何も嘘は付いていなのに、なぜか焦ってしまう俺。
嫁に浮気がバレた亭主みたいな言い訳だな、と自分でも少し思いながらも、質問に答えた。
「そう…………」
しかし、雪姫は一言返しただけで、それ以上の追及はせず、
そっと自分の胸を見下ろし、少し落ち込んだ様子で小さく溜息。
すると、辰沙が一歩前に出てきて雪姫へと話しかける。
優しい目で雪姫を気遣うように。
「雪姫様。お困りごとがございましたら何なりと。男性には相談しにくいこともあるでしょうから……ドラ」
「ん……、よろしく頼む」
「はい、お任せを、ドラ」
なぜか分かり合った雰囲気の両者。
会話の流れは胡狛と似ているが、ずっと辰沙の方が自然。
おそらく腹黒さの有無なのだろうな、と、俺は結論を出した。
<虎芽>
「こっちは虎芽。虎メイド系と格闘家系のダブル。体術に優れ超接近戦が得意。少しばかり女性としての嗜みに問題があるから雪姫は真似するなよ」
「マスター! 酷いガオ! 虎芽はとってもお淑やかなレディだガオ!」
俺の紹介に、不満そうに異議を唱える虎芽。
だが、足を大きく地団駄してミニスカートをチラチラ翻している姿はすでにお淑やかなレディではあり得ない。
「虎芽だ、ガオ。よろしくお願いするガオ!」
「雪姫、よろしく」
「とっても大人しそうな子だ、ガオ。虐められそうになったら虎芽を頼るガオ。守ってあげるガオ!」
「その時はお願いする」
「任せるガオ!」
テンション高めの虎芽に対し、雪姫はいつものクール対応。
常人なら風邪をひきそうな寒暖の差だが、両者とも全く気にしていない様子。
どっちもある意味マイペースの極致。
両極端だが似た者同士なのかもしれない。
<玖雀>
「玖雀だ。鳥メイド系と斥候系のダブル。超性能の感知レーダー持ちでチームの警戒担当。また、戦車の砲手や銃手もこなしてくれる頑張り屋さんだな」
「初めまして、玖雀と申します! チュンッ!」
「雪姫、よろしく」
玖雀が緊張気味に挨拶すると、雪姫もいつも通りの調子で返し、
けれども、気になったことがあるらしく、玖雀へと質問。
「メイドに斥候………もしかして光学迷彩も?」
「はい、得意です、チュン!」
「砲手、銃手………、銃スキルは?」
「射撃、小型銃、中型銃、狙撃が上級、砲撃が中級です、チュン!」
「多芸、大変結構」
「はい、ありがとうございます、チュン!」
いくつかの質問を投げかけ、その答えに満足した様子の雪姫。
そして、その後、なぜか怪訝な顔で俺へと向き直り、
「『ドラ』『ガオ』に続いて、『チュン』………、これはヒロの趣味?」
「違う。元々の仕様だ。変えられるモノなら俺も変えたい」
あらぬ疑いをかけられた俺は憮然な顔で反論した。
<タキヤシャ>
「タキヤシャだ。文武両刀のバランス型レジェンドタイプ。恐ろしく復活の早い中量級の従機を30機、超重量級の従機を3機保有する軍隊指揮型。ちなみに大好きなのは復讐。今は悪役令嬢モノのラノベにはまっているようだぞ」
「そう…………、ちなみに何? どんな話が好き?」
俺の紹介を受け、いきなりタキヤシャへと話を振る雪姫。
『悪役令嬢モノのラノベ』に興味があるのかないのか分からないが、相手の趣味に言及するとは雪姫にしては珍しいと言える反応。
話を振られたタキヤシャは、キラリと目の光を輝かせ、
「はい………、最近は『恋愛ざまぁ』系にハマっています。浮気や婚約破棄をしたパートナーを、別の高貴な相手と結ばれることで見返す、という流れ。見返す際の相手の見苦しく落ちぶれていく様が爽快でスカッとしますね」
「うんうん。浮気は良くない。そんな不誠実な男は、不幸な目に遭って当然」
「ウィヒヒヒヒ、その通りです。女を裏切った男は報いを受けるべきです」
「でも、あっさり死ぬと興ざめ。タイミングが重要。恨みはじっくり熟成した方が良い」
「そうですね。死んでしまえば『ざまぁ』はそこで終わり。ですから、ジワジワと弱っていき、長く苦しむ方がベター……、ヒャヒャヒャ!」
「おい、タキヤシャ、その辺でやめとけ」
妙に話が合ってしまい、変な方向に壊れていくタキヤシャを思わず制止。
普段はお淑やかを絵に描いたような令嬢だが、こと復讐に関することだけは、タガが外れておかしな具合になってしまう。
「はい、貴方様」
話が盛り上がりかけた所だったが、俺の制止に素直に従うタキヤシャ。
しかし、雪姫は話を遮られて少し不満そうな様子。
いや、まあ、あんまりおかしな影響を受けてもらっても困るから………
<ロキ>
「コイツはロキだ。神人型の元緋王。変身に分身、空間制御と創界制御が得意なサポート型。あと、享楽っていう加害スキルを持つ。嘘ばっかりつく奴だから気をつけろ」
「失礼だな、陛下。僕、生まれてこの方、嘘なんてついたことがないよ」
「嘘つけ!」
臆面も無くそう言い切るロキに一喝。
嘘から生まれてきたような生粋のペテン師の癖に、この厚顔無恥な振る舞い。
あまり雪姫には関わらせたくないが、
流石にロキだけを除け者にするわけにはいかない。
「ホラ、ロキ。挨拶しろ」
「んん~? へへへへ!」
渋々ながら雪姫への顔合わせを進めるも、
当のロキはヘラヘラ笑っているだけ。
「雪姫、よろしく」
「フフフフッ!」
雪姫から挨拶してもロキはガン無視。
顔に邪な笑みを浮かべ、その目に奸計を宿して、
ただ雪姫を見つめ返すだけであった。