カイルは、いつも疑問に思っている。
ユウは、当たり前のことのように言う。
――今日はリシア、機嫌が悪そうだ。
――なんかめっちゃ楽しそう。
――生暖かい目で見てるよね。
――今のは、絶対に悪い顔だ。
けれど、カイルの目に映るリシアは、いつも同じだった。
無表情で、淡々としていて、
声も、仕草も、視線も、ほとんど揺れない。
少なくともカイルには、
そこに「感情」と呼べるものは見えない。
見えないのに――
ユウは、迷いなく言葉を添える。
まるで、リシアの内側をそのまま見ているかのように。
何を根拠にしているのかは分からない。
視線でも、声でも、経験でも説明がつかない。
ただ一つ確かなのは、
ユウ以外には、誰にも見えていないということだ。
それでもカイルは、疑いきれない。
これまで何度も、
ユウの言葉通りに物事が動き、
あとから意味が追いついてくるのを見てきたからだ。
だから今日も、カイルは頷く。
自分には見えない何かを、
ユウだけが、当たり前のように見ている――
その事実を、受け入れるしかなかった。