剛士の元彼女 エリカの親友であり、執拗に悠里に嫌がらせを仕掛けた挙句、拉致して暴行を加えたカンナのその後です。
あの日に語っていた通り、カンナは翌日、実家に帰って行きました。
当日は、新幹線の駅までユタカが送ったようです。
カンナの実家は、その地域では名のある名家。
家長の命令は絶対というような、金はあれど自由はない、古風な面のある家でした。
故にカンナも、父の決めた「お前の決めた大学には行かせない。地元に戻り、浪人して地元の大学を受け直せ」
という命令に逆らうことができませんでした。
父としては、高校をカンナの希望したマリ女に行かせたのだから、充分に自由を与えた。
あとは父の思う大学に入り、コネのある会社に入り、父の決めた男と結婚させるつもりだったのですね。
それが娘のカンナの幸せであると、本気で考えています。
昔ながらの、田舎の固い風習の中で生きてきた、古い価値観の親なので。
そうしてカンナは、実家で浪人生活を始めるわけですが、程なく心身のバランスを崩してしまいました。
悠里をはじめ、エリカ、剛士を恨んだり、
逆に、彼女らに対して謝りたい、償いたいと考えたり、
カンナなりに葛藤の日々を過ごします。
カンナも、もともと自分の行いが逆恨みであることを理解していました。
けれど、理性が欲求を抑えられませんでした。
それどころか、間違った理性が、欲求を正当化しました。
親友のエリカのためだとか、悠里は剛士に相応しくないだとか。
自分に都合の良い理屈を捏ねて、自分の行動は全て正しいと思い込もうとしていました。
そうしているうちに、カンナの心は、理性と欲求のバランスを崩し、ゆっくりと壊れていきました。
カンナの心が、捻じ曲げた理屈を手放し、フラットな状態に戻るには、これから数年かかります。
20歳を越え、ようやく(あの頃の自分は愚かだった)と、自分を省みることができるようになると思います。
そうなってからカンナは、1通、エリカに手紙を書きます。
心を込めた謝罪を。
エリカもそれを受け入れ、再び親友に戻ることはないとしても、たまに手紙のやり取りをするくらいの心の交流を持つでしょう。
その手紙には、意図的に、悠里と剛士のことには触れないと思います。
もうあの2人を、二度と傷つけることのないように。
ひっそりと、カンナとエリカの友情だけが、続いていきます。